mimitakoyaki

戦場でワルツをのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

戦場でワルツを(2008年製作の映画)
4.2
このところBreaking Bad にどハマりして、忙しい平日の晩でもめちゃくちゃ努力して見る時間をつくったりして、そっちに必死で全然映画を観てなかったので、久しぶりの映画DVD鑑賞です。

レバノン戦争に携わってたイスラエルの元兵士である監督が、トラウマからレバノン戦争の記憶をなくしていることを自覚し、かつて戦地で一緒に戦った人たちや関係者を尋ね歩き、自分の記憶の穴を埋めていくというドキュメンタリー。

ドキュメンタリーでありながらアニメーションという手法が用いられてて、とても個性的だとは思っていましたが、全てはラストのためだということが最後まで観るとわかりました。
アニメである事がとても効果的で、ラストには大変な衝撃を受けました。

以前、イスラエルの戦場カメラマンが撮ったドキュメンタリー映画を観た時、圧倒的な武力で侵略するイスラエルと抵抗するパレスチナが対等な戦いをしてるかのように描かれ、パレスチナ人をテロリスト呼ばわりしていてとてもガッカリしたものですが、今作は、イスラエル人兵士の加害性もしっかりと描かれていて、戦争を正当化したり美化するような事もなく、今年観た「野火」でもそうでしたが、なぜ戦争をしてるのかの大義も状況も語られず、戦争の狂気や残酷さ非道さをずっと見せていきます。

敵とか味方とか大義とかなく、戦争とは相手を人間とも思わず殺すことであり、そこに正義だのを持ち出して正当化しても、やってることは街を破壊し人や動物を殺すことだとあらためて思いました。

問題となったパレスチナ人難民キャンプでの大虐殺は、親イスラエルのレバノン兵の行為として描かれていますが、イスラエルの責任も大きいわけで、そこはもう少し突っ込んで欲しかった気はしますが、それでもこの映画をイスラエル人が作り、自国の愚かな戦争犯罪、人道への罪と向き合う勇気が素晴らしいと思いました。

そして、20年の月日をもってしても、戦争によって心に受けた傷が癒されず、夢に見たりフラッシュバックがあったりなど、PTSDに苦しんでるのを見ても、戦争は誰の心も深く傷つけてしまうのだと、その罪深さを感じました。

アニメはほとんど見ないのですが、日本のアニメとは絵の感じも違うし、切り絵のような絵で劇画タッチなのも新鮮で良かったです。

衝撃が強すぎて震えがくるあのラストを見たら、どんな理由があっても戦争は許されないと思いました。

【15-67】
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