円柱野郎

戦場でワルツをの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

戦場でワルツを(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリー作品でありながら、なぜアニメという表現を取ったのか。
1つには当時の戦場の再現において自由度が高いからだろう。
かなり手間のかかったアニメーション技法だとは思うけれど、それでも実写のセットを組むよりは再現映像を作りやすいと思われる。
もう一つは虚実の境を曖昧にできるということ。
作品はドキュメンタリーではあるが、監督自身が自分の失った記憶を探すというドラマでもある。
“インタビュー”“監督の観た夢”“戦友たちの証言の再現”の3つをアニメーションというフィルタを通した同じレベルで描くことで、リアル感の水準を虚実で統一させることが出来る。
最後に、これがこの作品の最大のキモだと思うが、アニメーションというフィルタを通して観客が体験する映像はハッキリ言って作り物である。
これは意図的で、だからこそ最後の実写映像の衝撃が最大限に効果を発揮する。

劇中でPTSDや“解離”の説明で語られた戦場のアマチュア・カメラマンの話…。
「カメラを通して旅行者気分でフィクションだと思って見る感覚」からの「やがてカメラが壊れ、何の罪もない動物がなぶり殺されたという現実に素手で触れた…」を観客に追体験させる仕掛けなのは明白。
そして俺はまんまとやられてしまった。
その時、「これは現実に起きた虐殺事件だったのだ」と理解した。

“サブラ・シャティーラの虐殺事件”と聞いても日本人の俺にはピンとこない。
中東戦争やイスラエルのレバノン侵攻は少しは知っているつもりでも、やはり遠い国の事なのだろう。
この映画はアニメという媒体を使うことで観客へ純粋なドキュメンタリーとは違うアプローチを仕掛けてきたと思うし、それは成功しているとも思う。
イスラエルの映画だが、事件を起こしたのはレバノンのファランヘ党だとしても、加担者としてのイスラエルという監督の苦悩が感じられる。
何より劇中で、それを第二次大戦のホロコーストに重ねたところが凄いと思った。