カテリーナ

戦場でワルツをのカテリーナのレビュー・感想・評価

戦場でワルツを(2008年製作の映画)
4.7
体験した恐怖を観客が辿る時

トラウマとは 経験した恐怖に自身が向き合えない状態を指し 実は「忘れていること自体を忘れている」事である
アリ・フォルマン監督自身の抜け落ちた記憶を取り戻していく課程を観客も追体験する 特殊な作品である

監督が取り戻す記憶はアニメーションによって再現される
追体験される事によりこの時の監督の感情が観客にも伝わる
人間の自己防衛本能が 記憶を覆い隠してしまう事を知る それをアリ・フォルマン監督は自ら掘り起こす その勇気
しかし 不屈の精神が払った代償は余りにも大きく
優れた作品故に二度と観たくない という映画がまた ひとつ増えた

以下は監督自身がインタビューで語った内容だ
まったく個人的な私の体験です。自分の記憶から人生のある重要な部分が欠落していると気付いた瞬間からの物語をそのまま辿っています。『戦場でワルツを』を作っていた4年の間に、私は精神的な大変動を経験しました。自分の過去のあまりに重いものに数多く出会いながら、並行してその時期に妻との間に3人の子供を世に生み出した。まるで息子たちのためにやったと感じるかもしれません。彼らが大きくなってこの映画を見たら、正しい決断をする手助けになるかもしれない。何があっても、何のためでも、戦争のどんな一端であっても担ってはいけないという決断を。

かつてインドネシア映画のドキュメンタリー映画『アクトオブキリング』で
大虐殺を過去に経験している老人が
孫を膝に抱きながら自ら虐殺される役を演じたフィルムを見せていた場面を希望的観測から重ねた私であった
カテリーナ

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