タケオ

戦場でワルツをのタケオのレビュー・感想・評価

戦場でワルツを(2008年製作の映画)
3.8
冒頭、獰猛な犬たちが街を駆け抜けていくショットから映画は始まる。スタイリッシュかつ洗練されたアニメーション•デザインに、主人公アル•フォルマン(本人)と友人の会話から明かされるその犬たちの驚きの正体と、開始からたったの5分で心を鷲掴みにされた。これは凄い映画だ。そんな期待を一切裏切ることなく、本作はテンポのよいスマートな語り口でクライマックスまでいっきに駆け抜ける。レバノン戦争に従軍していた主人公がかつての仲間を訪ねてまわり、亡失してしまった「サブラ•シャティーラの虐殺」の記憶を追うという'回想形式'で映画が進行していくが、主人公がたどり着く結末も実に衝撃的だ。クライマックスの'ここぞ'という瞬間にアニメーションが実写へ切り替わるのだが、この演出が本作の「実話」という重みを一層際立たせている。イスラエル国防軍の命令に、理由も分からぬまま従った若者たち。意識せず「戦争」と「虐殺」に加担した、そんな事実を前にただ立ち尽くすしかない苦しみは、戦争が続く限り決して他人事ではないのだ——。
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