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台風家族のumisodachiのレビュー・感想・評価

台風家族(2019年製作の映画)
3.3
色々あって上映が伸びた上に、3週間限定で公開されることになった作品。草彅剛主演。

10年前、葬儀屋夫婦が銀行から2000万円を強奪して姿を消した。時効が成立する日に行なわれた法律上の葬儀(失踪から7年以上経っているため)の場に、長男一家(娘ひとり)、次男、長女が集まった。末っ子の姿は見えないが、長女の彼氏も現れた。800万円の遺産を長男が独占しようとしたことで話しがこじれていき、物語は意外な展開へ……。

ぶっちゃけ、「舞台でいいじゃん」という気持ちは否定できない。基本的にワンシチュエーションの会話劇だし、映像を使えば舞台で全部できると思う。映像の使い方によっては舞台の方が面白くなるとすら思う。でもまあ、それは置いておこう。

草彅剛が演じる長男はケチなクズ野郎で、他の兄弟も褒められた人間ではない。また、失踪した父親もかなりの暴君だったらしい。とりあえず遺産を巡って下品な言い争いが始まるわけだが、途中からストーリーは斜め上に軌道を外れていく。

最初は「よくある家族ものかあ」なんて思っていたら、ある人物が登場したところから急にアクセルがかかりだして驚いた。後出し要素が多すぎて反則だとも思うが、畳みかけてくるので冷静になる暇を与えない。そのままさらに明後日な方向に飛んで行って、呆気にとられたまま終わった。舞台だったらさらに巻き込む力が増して、かなりの興奮状態で終演になっただろう。

終盤のトンデモファンタジー展開には思わず噴いてしまったが、伝えようとするメッセージはわかるし周囲には泣いている人もいた。でも、共感できるかどうかは人によるだろう。私は、「いやいやいや、だからといって免罪されないよ?」と冷めてしまった方だ。愛とは利己的なものだが、どこまで許容できるかには個人差がある。『天気の子』にも共感できなかったので、私はけっこう社会性を重んじるタイプだということなのだろう。

どのキャラクターも良かったが、特に若葉竜也が秀逸。唯一血縁的にも歴史的にも家族と無関係な人物であり、ある意味で観客と視点を共有している役どころ。出すぎてもいけないし、存在感が薄すぎてもいけない微妙なポジションだったが、見事に演じていた。

あと、長男の娘(中学生)の扱いは気になったなー。いくつか「それは見せるなよ」っていうシーンに同席させていた。子どもを登場させるならば相応の配慮をしてください。
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