さすらいの旅人

おいしい家族のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

おいしい家族(2019年製作の映画)
3.7
おはぎが食べたくなる愛情世界の物語。WOWOW録画視聴。

本作品は離婚の危機を感じながら生活をしている主人公(松本穂香)が、母の三回忌で故郷に帰るが、そこには過去とは全く違う日常世界が待っていたと言う物語。
そこは、常識とか世間体とか関係ない世界であり、ファンタジー世界と言える。

妻を失った父親(板尾創路)が母親の服を着て生活している。校長である彼はその服装のまま毎朝校門で生徒に挨拶している。誰も批判もせず、それが日常なのだ。
父は母になりたくて料理を研究し、母の味に近い料理上手になっていた。
劇中の父親が作るすき焼きや空揚げ、煮物、おはぎなどは非常に美味しそうである。その中で、母の想い出の手作りのおはぎが出て来るが、特に美味しそうに私は見えた。

この作品の独創性は父親の性的位置づけだろう。女装趣味でもなく、ゲイでもない。その父が、家族を作りたいという男(浜野謙太)と結婚することになる。そこには俗に言う性的な関係もない。あるのは愛情だけだ。
離婚を告白した娘に対して父親は「生きていれば、それでいい」と愛情こめてやさしく言うシーンがあるが、これがこの映画のテーマだ。

最後にこの映画は撮影が素晴らしい。都市部や島の風景を流れるようなカメラワークで上手く撮っていた。特にラスト近く、島の青い海を背景に結婚を祝う人々が横一列にならび祝うショットは、色彩のコントラストが良く感動した。