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ボーダー 二つの世界のFoufouのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.5
本作は『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者ヨン様の短編の映画化。原作を読まずに鑑賞です。あと数日でアマプラの無料配信が終了してしまうので。

批評家ウケは良かったはずが、日本ではレビューを見てもあまりパッとせず。

映画自体、非常に丁寧に作られている。ヨーロッパ系の賞レースを意識してますね。実際カンヌとってるわけですし。サスペンスの要素が二重にあって飽きさせない演出。素晴らしいとさえ言っていいのかもしれない。




※ここからネタバレです。




日本人がこれを観ると、いわゆる同和問題を連想するのではないか。あるいはアイヌ人の同化政策とか。はたまた在日問題とか。いや、ことはもっと普遍的で、ユダヤ人差別とか黒人差別とか、障害者差別とか、要するにマイノリティの差別と迫害問題ですね。で、この作品、ちょっとそうした問題系のメタファーとして寄り添う節があるんです。これを必ずしも是としない見方があるのだろうというのが一つ。

いっぽうで、ファンタジーのリアル化とでもいうんでしょうか、空想上の生き物が、じつは科学的に存在証明可能な何かだったと。その種明かしにはある程度成功していると思うんですけど、『ウイッチ』のようにおぞましさをそのまま受けとめられるようなものではなく、なんか、生態があばかれていけばいくほどにこちらも戸惑いを隠し切れないというか。その居心地の悪さこそ作り手の狙い通りなんだけど、映画に求められるカタルシスを阻害しているのも確か。

というわけで、なんか難しい映画になっています。トロルが滅びゆくことで、こんな困ったことが地球全体に起きている、とわかれば、まだしもわかりやすかったかもしれません。あるいはその昔、ヒトとの共存が可能だった時代に言及されるとか。

クロマニョン人がネアンデルタール人を滅ぼしたという説を思い出しました。基本、人間って多様性を認めるよりは……。
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