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ボーダー 二つの世界のHSMTのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
4.0
理解者は存在しない…絶望し続けていた淵で、自分を受け入れるだけでなく理解してくれる相手が現れた瞬間から、内なる自分が目を覚ましていく。
この映画では大多数からはじき出されてしまった存在に焦点を当て、そっと寄り添おうとするダークファンタジーだった。

世界には性別や生まれ、文化や価値観など様々な境界線が存在する。
容姿から周囲だけでなく自身も世界に境界線を引くティーナは
嗅覚によって人の「隠したい後ろめたい何か」を嗅ぎ分ける。
その姿は猟犬を連想させるが、後々に容姿だけでなく彼女の能力に対するその理由は丁寧に痛ましく切々と明かされていく。

内容はメッセージ性は勿論、北欧独特の鋭いストーリーはお墨付き。
ティーナの目から見える世界は醜さも優しさも感じられる
冷え切った山の空気、苔の匂い、虫のささやかな蠢き…
五感は研ぎ澄まされ、観客の価値観を何度も揺さぶり彼女と同様に自然と現代社会の狭間に心が揺れていく濃密な110分が過ごせる作品だった。

具体的には楽しみを削いでしまうと思うので
敢えて詳細は触れられないが
神秘的な描写も多く、キリスト教という切り口でも序盤から伏線が張り巡らされており「そういえば確かに…」と気が付く場面があり、とても楽しめる。

映画のスクリーンに映るのはお決まりの美男美女ではない、無いものとして扱われてしまう存在達の境界線の物語なのである。
1人では生きられないけれど、自分を虐げた人々への絶望や怒りと寄り添って生き続けられるだろうか?
悲しみと希望に満ちた愛の形に心が締め付けられ、度々涙が滲んだ。