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父から息子へ ~戦火の国より~のTOTのレビュー・感想・評価

3.8
‪アルカイダ関連組織メンバーの父とその息子たち。
イスラム主義者の父の愛と教え、国家の戦士へと育てられる子供の体のすぐ傍に銃撃。
無邪気な時間は一瞬で、息子たちは羊のように神への供物にされる。‬
‪ラジオは敵の首をはねろと言い、大人が鞭打ちの冗談を飛ばす環境で、子供は悪意なく鳥を刺して首をはねる。
父が兵器材料を得るため地雷除去に出かける中、子供は簡易地雷を作って遊ぶ。
大人の轍を子供が踏む。
「神は偉大なり」の言葉の下で子供の笑顔が消えていく。‬
‪家庭でも外でも、学校の少女以外は女性が映らない(声は聞こえる)。
父はもっと妻を得て子供を産ませたい(そして戦士に)と言い、学校で少年は無邪気に少女に石を投げ、少女は遠くに逃げる。
‪監督は『それでも僕は帰る』を撮ったベルリン在住シリア人タラル・デルキ。
祖国で、父と子が互いを思う時間と、少年が戦士に変わる時間を追った2年間‪は、戦火の国で透明化される女性存在、そうならざるを得ない男性中心社会も露呈させる。‬
ドイツ・ドキュメンタリー映画賞をはじめ数々の賞を受賞し、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞にもノミネートされた今作。
‪ラストカット、撮影を終えて祖国を去る監督の言葉も辛い。‬
公開しちゃいなよ。

ドイツ映画祭
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