ホリ

よこがおのホリのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
4.6
人間の『黒い感情』が見え隠れして、
その瞬間が見えてしまった時って、ゾッとする。
その『ゾッとする』瞬間が、この映画には何度も登場する。そこが恐ろしい。

『黒い感情』が見えるまでの過程…
その瞬間の爆発の見せ方が絶妙に上手い。

ファーストシーンは、美容院の室内の様子を伺いながら、中に入る主人公のカットから始まる。
主人公(彼女)は、指名制で一人の男性の名前を上げており、その男性にヘアカットをお願いすることになる。
会話のやり取りで、『死んだ夫とあなたの名前が一緒だったから』
『仕事を辞めたから、気持ちを変えたくて髪色を変えたい』
『仕事はホームヘルパー的なものをやっていた』
と、彼女の人物像をファーストシーンからドンドン引き出していく。

言葉(台詞)による情報の先入観から、
次のシーンで、彼女がホームヘルパーの仕事をやっているカットに繋がっても違和感を感じさせない。
そして、時間が過去に戻っていることも、自然な流れで繋げている。

ファーストシーンから、登場人物の情報源…『仕事を辞めた』や『ホームヘルパーをやっていた』という過去を引き出すことによって、そこに行き着くまでの主人公の挙動を落ち着いて見ることが出来る。

それと同時に、
『死んだ夫とあなたの名前が一緒だったから』といった嘘の情報も明確になっていき、感情の二面性を映し出している。

嘘が明確になることによって、
彼女はなぜ、この男性に近づいたのか?
仕事を辞めたのはなぜ?
仕事(職場)の環境で何かトラブルが起きたのか?と
ファーストシーンの言葉にどんどん『?』が付いていき、人の言葉や行動一つ一つに疑いを持ちながら見ることが出来る。

【疑いを持ちながら見れる】
ことによって、『黒い感情』の積み重ねや爆発をより集中して観察することができ、観客をよりゾッとさせるリアリティを生じさせている。

【その他メモ】
・主人公が『ワンワン』と泣き出す感情のコントロールの一線…夢と現実の境目

・『青髪』になった主人公がどんどん湖の中に沈んでいく様子…『こうして彼女は、壊れて行った』の比喩表現
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