よこがおの作品情報・感想・評価

上映館(14館)

「よこがお」に投稿された感想・評価

Kuuta

Kuutaの感想・評価

4.0
全然知らずに行ったらテアトル新宿に深田監督本人がいてびっくりでした。

全くいわれもない誹謗中傷ではなくて、事実関係そのものは合っている。「これって本当ですか?」。ただ、その発言に至るまでのニュアンスは伝わらない。世間はタバコの煙のような曖昧さを、秩序を乱す加害者の言い分を、丁寧に汲み取ってはくれない。ファーストカットで揺れながら美容院に入る、筒井真理子の不穏な間合いと表情がとにかく素晴らしい。

主人公市子の行動は真面目すぎる性格もあってか常識からややズレているし、何度も破滅的な妄想にとらわれる。不運に巻き込まれただけのヒロインとは到底思えない。甥っ子への行為はアウトとしか思えない。隠している裏の顔ではなく、「他人から見た印象」としての横顔。断片的な情報、どれだけのピースを繋げても、人間の絵は完成しない。

最初はなんで市川実日子にこんな若めの役を…と思っていたが、あの基子のビジュアルと存在感がちゃんと後半意味を持ってくる。見事なキャスティングだった。

基子の青、和道(池松壮亮)の黒。同じひまわりでも見え方が違う。夜の公園で、顔を正面から陰影を効かせて捉える→昼間の公園で、真横から横顔を写す。白衣のヘルパーだったはずの市子はペンキの血に染まった体を拭うように洗い物を繰り返し、湖に消えようとする。基子とのロマンスが走り出したかと思った矢先、青と赤の信号と白い横断歩道が2人を引き裂く。復讐の赤いドレスに身を包んだ市子は和道を奪うため、基子に似せた青いドレスを着る。

音の使い方。最初の美容院のドライヤーの不快なやかましさから良い。基子は慟哭するかのようにクラクションを鳴らし、彼女を取り巻く雑音の世界を消そうとする。

社会性を剥ぎ取られ、動物になる。市子からリサへの大胆な変身とその虚しさ。ヒッチコックの「めまい」や「裏窓」も連想する。引っ越し済みの大石家を訪ねた際の、室内からのショットが気持ち悪くて印象的だった。見る見られる関係の逆転をアパートとマンションで示しつつ、市子もまた見られる立場にいること、映画全体の入れ子構造を観客に意識させる。

警察が市子と接触した様子がないのは納得できなかった。手引き云々は別にしても、家に出入りする部外者に全く話を聞かないってことはないだろうし。職場を辞めた直後の囲み取材の雑な質問や追いかけ回す描写は、敢えてなんだろうが、こちらも違和感が拭えなかった。

被害者支援室から断られてドン底の市子の前に現れた和道は、彼女にとっての救いだった。だが、都合良く彼を利用して絶望から逃れようとした先には、もう一つの絶望が待ち構えていた。この残酷な展開と、善悪の線引きが曖昧な沼に溺れるような作劇は、やはりイチャンドンを連想した。81点。
taro1971

taro1971の感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

始まってすぐ「誰かの木琴」を思い出す。池松君だし。前半四つん這いになって犬のように振る舞う深田映画のミューズにハラハラする。その後も最後まで息つく間もなく、ぐったりと疲れてしまった。今回もすごい映画でした。深田監督、筒井真理子でもっと撮ってください。
マスコミの描かれ方が死ぬほど気持ち悪い。怖いんじゃなく気持ち悪い。主人公の自宅や職場にハエのように集る様も気持ち悪いけど、不規則にインターホン鳴らすあの感じや玄関モニターに映るあの太々しい態度も死ぬほど気持ち悪かった。そして何より気持ち悪いのは自分もあんな気持ち悪いマスコミの餌食になる可能性が少なからずあるいう事が何よりも気持ち悪い。

主人公への追い込みが素晴らしかった。最終的に主人公は仕事も家族も友人も何もかも失う。キャラクターは追い込めば追い込む程魅力的になるってのが個人的な持論なんだけど、本作もまさにそうだった。

ただ少し気掛かりだったのが作中、意図的に不自然なライティング(昼の光が急に夕方の光になったり、市川実日子の後ろから強いライトを当てたり)が数カ所あってそこで毎回冷めてしまった。物語を語る上で圧倒的に邪魔な演出だと思ったんだけど、どういう意図でそういう不自然なライティングをしたのかを深田晃司監督に聞いてみたいと思った。
りほり

りほりの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

見終わった後、あの終わり方
じわじわくる恐怖と
息をするのも忘れるくらいの緊張感で
心拍数上がって心臓バクバクしてた。

復讐に生きる狂気にあふれたリサ(市子)と訪問看護師として周囲からの信頼を得て幸せな日々を送る優しさで溢れる市子を並行させて物語が進んでいく。
同一人物なのに、全くの別人。
真反対の側面を観ているような
まさに「よこがお」だなと感じた。
信じていた人に裏切られ、職も結婚相手も失い、何もかも失い人生のどん底に落ちるとこうも変わってしまうのか。

もう一つメディアの影響力の強さに対しても恐怖を感じた。
深く考えず、その時の感情の勢いで言ってしまった言葉。
私たち視聴者は、その報道が、その記事が
真実なのか否かも考えず鵜呑みにしてしまう。
そうやって市子のような、無実の加害者ができてしまう。
たった一言、ひとつの記事で、
普通の生活すら送れなくなってしまう。
1人の人の人生をあんなにも変えてしまう。
そんなことも考えさせられる作品でした。
kyohei

kyoheiの感想・評価

3.7
主人公の市子のように無実の加害者になったらと思うと…いろいろと考えさせられました。

訪問看護師で周囲からの信頼も高かったのに…たった一つの小さな嘘でこんなに崩壊していく怖さがありました。

あの喫茶店で甥っ子と訪問先の家の長女と次女が会ったのは、全くの偶然だったのに…マスコミが話を盛れば盛るほど、餌食になっていく展開にげんなりしました。

まさに体を張っていた市子役の筒井真理子は、凄いと思った。
なんか夢の中で犬のようになっていたのは驚いた。
市子に思いを寄せる基子役の市川実日子も凄かったですよ、もう振り回させられるし、復讐をしたとしてもこれじゃ無い感が…なんとも言えなかったです。

ストーリーは現在パートと過去パートが交互に描かれていく作りだった。
tanako

tanakoの感想・評価

4.5
些細な悪意、故意、過失、は、
日常のどこにでも存在していて。

100%自分は悪くないと思っていても、
良心の呵責や、自責の念も拭えない、という、
ものすごく人間らしい話だと思いました。

前作「淵に立つ」の方が、モヤモヤ感は強かったから、本作の方が見やすかったです。
深田監督は、緻密で丁寧な作品を作るなと改めて思いました。


筒井真理子さんが素晴らしいのは、言わずもがな、です。
"出来事"の爆心地ではなく、中心に近いけど少し逸れた場所で巻き起こる理不尽な物語。
お互いの想いの錯綜によってドツボにハマっていくのがなんとも遣る瀬無いようで実際の所どれもこれも単なるエゴに近いもので、その辺の心理描写の見え隠れが巧みで話しの流れ自体は割りとベタなものなんだけど、終始ハラハラしながら観られた。
それにしてもマスコミはどんなジャンルでも活躍するスーパーヴィランなのだなぁ

直接的な物語の繋がりもそうだけど人物の造形の見せ方が実に緻密で、物語の変化が訪れた時のキャラのリアクションの裏打ちが日常的な描写の中でしっかりされていて、伏線としても膝を打つような場面が多かった。
とりわけ、「淵に立つ」でもそうだったけど筒井真理子による"時間の経過"の説得力が物凄くて、今回に関しては演出的にも物語的にも作用する部分がより大きくて、観ている内は自然すぎて気にならないのだけど後から考えると凄かったなと気づく。
ただ犬とかあの辺の遊びすぎな感じはあってもなくても良いなと感じちゃったかな…。

演出は本当に印象に残るというか、家屋の内側から撮る所とか、家族や恋人とのセルフィーとか、ラストカットとか、なんてことない風景を強烈にこびりつかせるカメラ使い本当にスゴい。
sukoh

sukohの感想・評価

3.5
ストーリーは単純な復讐劇だけど、役者が醸す雰囲気とジメッぽい演出を楽しむ映画
y

yの感想・評価

3.9
出てる俳優さんみんなすごい…
えぐくてもう一度みたいとは思わないけどすごくどの場面も印象的だった
いの

いのの感想・評価

4.6


【ほとり:海や川・池などの水際】

【淵:底が深く水がよどんでいる所】
      あるいは、
【淵:容易に抜け出られない苦しい境遇】


「淵に立つ」と繋がっていて、筒井真理子さんがいきなり赤いコートで登場すると、観ている私の心拍数があがる。車についた赤いペンキ、そしてなんと今回も、すべり台が!しかも、赤! あぁ、何か起きたらどうしよう!と、またまた心臓が苦しくなる。仕事帰りに観たけど、どうしよう、まったくウトウトできないじゃないかっ。
白と黒とに分けられない世界に、際限の無いグレーじゃなくて、赤をぶっ込んでくる深田晃司は、ものすごく攻めている人なんだろうと思う。唐突に入る、車のクラクションの不協和音(しかも長い)。唐突に入る、犬の吠える声(しかもアレです)。ブラウンに染めた髪の毛は、緑にもなる。


あとになってから、これは大事な発言だったと気づくような会話は、動物園で語られる。自らも犬になって四つ足で歩く。私たちも動物だ。もともと舞台役者の経験が長い筒井真理子さんの、身体能力の高さに、あらためて感じ入る。私たちが普段使わないで、眠らせたままでいて、まったく使い途がわかっていない身体を(心もそう)、こんな風にも使うことができるのだと、提示されたような気がする。


ごめんねって謝りたいのは、自分の為なんだと思った。タツオがそれを口にする時。(そして、私はタツオがそれを口にすることを、許せないと怒ってる。)


完全な悪人など何処にもいなくて、いじわるになったり、ごめんなさいを言ったり。善意と悪意と後悔と、そして言い訳とを、行ったり来たり。自分では自覚していない嫌~な部分も、私には、まだまだありそうだ。普段見ないようにしているのに。地中深くに、こっそり埋めてあったのに。埋めたことを忘れていたのに。ここにあるかもと当りをつけられ、地中深くを掘り返され、見事に、発掘現場から発見されてしまった気分。それは、恥辱にまみれたものであったハズなのに、なぜか、ある意味爽快。


よこがお。それは、見つめる人がいて、見つめる人にとっての、よこがおなんだろうな。あるいは、見つめられたら、それは、「よこがお」になる。市川実和子がいてこその、筒井真理子の、よこがお、だった。傑作。こんな風に、オトナの女性2人を撮ってくれるなんて。今、私の頭のなかで、2人が赤いシーソーに乗って上がったり下がったりして揺れている(妄想)。私は、妄想のなかで、2人のよこがおを、見つめている。
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