唯

ロマンスドールの唯のレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
2.5
蒼井優は、線の細さが良い。
華奢な背中とデコルテ、目が無くなる位にくしゃっとした笑顔、薄化粧で丸出しのおでこ、庶民的で力の抜けたファッション、世界一白無垢の似合う顔立ちとスタイル。
男が惚れる要素の全てを持ち合わせているのだよなあ。
そして、どこか欠落した箇所というか隙があり、それが本人の隙の無さを生み出してもいる。

高橋一生もまた、こうした日常的なシンプルな役が似合う。
きたろうは、セクハラ親父が似合う。笑

園子の様に、あっさり騙されて、こうやって闇落ちする女子は山程いるだろうなあ。
それと、会社名とかどうしてるの?という素朴な疑問。

妻がいないと、食事がカップ麺やコンビニ弁当になってしまうというのは男のあるあるだろう。
温かな家庭の味にこそ幸せを感じる。それは、どの時代にあっても普遍的な幸福の価値観。

しかし、時には、一人より二人でいる方が孤独という皮肉が生じる。
そこには、口に出さずとも淋しさに気付いてくれるだろうという驕りや怠慢がある。
気持ちとは裏腹に、夫婦関係は何となくずるずると続けてしまえるし、そこに縋ってしまう。
夫婦になると、こんなにも互いに甘えてしまうものなのか。

男と女の在り方を問い質す系かと思いきや、途中から病気ものに方向転換(というか要素の追加)。

目を背けたい現実が行き着く先はセックス、という点に究極のリアリティを感じる。
妻は夫に自身を模した人形作りを依頼するが、死んだ後に思い出してもらうためじゃない。
今、この肉体に意識が宿っている間に、自分の体の細部に至るまでずうっと見つめて欲しい、という切望の表れで。
そうして、互いに交わり慈しむ時間を一分一秒でも長く持ちたい、のだ。

ラブドールを扱う作品は繊細なものが多いよね。
人間を象る営みとは、深淵な眼差しと人形に対する愛着が必須だからだろうか。
魂を吹き込む作業であり、確実に命が宿るからこそ、人として扱わねばならないもんね。
唯