KanaiSatoru

ロマンスドールのKanaiSatoruのレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
4.1
ロマンスドールを観ました。

あらすじは、美大卒業後、ひょんなことからラブドール製作工場で働き始めた北村哲雄。やがて彼は美人で気立ての良い園子に一目ぼれして結婚するが、自分がラブドール職人であることを園子に隠し続けていた、、、そんなある日、園子は秘密を哲雄に打ち明ける、、、果たしてその秘密とは?
という内容です。

出ている役者さんが皆さん素晴らしく、配役がハマると映画の質が格段に良くなるという良い例ですね。
まず哲雄役の高橋一生がとっても上手く、哲雄に成り切ってます。哲雄のキャラ(不器用で真面目で優しくて、それでいて1つのことに情熱を注げる男)が観ているこちらに違和感なく伝わってきます。
特に家に帰りたくないなぁ、という思いで家の前で引き返すシーンや園子との会話シーンなど、素晴らしいです。
それから相川役のきたろうが素晴らしい!
薄汚れた職人役がハマってます。
あと蒼井優、ホントに魅力的な女優さんですね、彼女に色気を感じたことなかったのですが、こんな役も出来るんですね、観る側が感動すらしてしまうような表情を魅せます

夫婦のコミュニケーション、第三者から見たら何やったんねん、と思うようなことも、自分のことになると気づかないのかもしれない
観る側がパートナーとのコミュニケーションについて少しでも気づくことがあったなら、それがこの映画を観た価値ですね

さて劇中、序盤から中盤にかけては、わりとコメディ色が強く楽しく観れていたのですが、園子が秘密を打ち明けてからの展開がシリアス過ぎて、テイストが変わる点にちょっと戸惑いました。
まあこういう展開の映画ってわりとあるのですが、後半部分にラブシーンを乱発する展開と、ラストシーンで哲雄が言うセリフが、結局、何が言いたかったのかよくわからなくさせており、テーマが理解しにくい映画ってことで戸惑ったわけです。

この後。若干のネタバレあります、ご注意ください。

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こういう時は監督さんのインタビューを読むのですが、監督さん女性なんですね、なんか作りが凄く丁寧だな、と思ったのはそのせいでした。
さて監督さんは、インタビューでこう言うてます「遺された人間はどう生きるか」ということが最大のテーマ。
うーん、なるほど、なるほど。
解釈によっては、純愛映画、遺された人間が片割れの分まで生きなくちゃ、生きていこう!と強く違う映画に見えます。

しかし!逆の解釈をすれば、エロい男が魂をこめるとか、もっともそうなこと言って奥さんの分身を作り、その分身とエロいことをしながら奥さんを思い出す、さらに奥さん人形を他の男たちに抱かせて、それを糧に生きていく、という変態映画にも見えるのです。

なんか哲雄と園子が素晴らしいのと、全体の雰囲気が丁寧で暖かいので、良い方に解釈してしまいますが、監督さんに上手く騙されたような気がする映画ですね

ちょっと人に勧めて感想を聞きたい、という意味で、個人的には少し高めの82点です。
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