ジャン黒糖

ロマンスドールのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
3.4
好きな監督タナダユキが今年初めに公開した作品を観ていなかった!

【物語】
ラブドール職人として働く哲雄は師匠の夢である人に限りなく近いラブドールを作るため、”医療用乳房の型作り”と偽って美術モデルを募集。そこにモデルとして訪れた園子と恋に落ちる。
自分の職業を偽ったままやがて結婚する哲雄と園子、2人の10年に渡る結婚生活を描く。

【感想】
んー、先に結論からいくと、素敵な話ではあると思う。既婚者として、夫婦間で抱える秘密の言えない居心地悪さや、それがあらわになったときの居たたまれなさなどは共感できる。
ただ自分の好みではなかったかな。
そう思う理由2点について、以下感想ツラツラと。

①主人公・哲雄の想いの中心がわかりにくかった≒作品の軸が散漫な印象
この映画は、雑なプロットは以下の通り。
1.美大彫刻家の経験を活かしてお金に困ったフリーター、ラブドール職人になる
2.美術モデルとして来た彼女に惚れ、職業を偽ったまま結婚
3.師匠の情熱に触発されるようにラブドール職人としての情熱に目覚める
4.夫婦の互いに抱えていた秘密が明らかに。妻が実は…
5.秘密を打ち明けた末の2人はどう乗り越えるのか?

物語を楽しむ要素がいくつかある分にはアトラクションとして楽しむ。
けど、本作の場合どちらかといえば話のテーマがブレてしまった、というのが個人的印象。
職人としてはなかなか陽の目を浴びない、というか世間的には低俗に見られてしまうようなラブドール職人としての苦難乗り越えるサクセスストーリーが軸なのか(その”サクセス”には職業を偽っていた妻へ打ち明けるというハードルも含む)、妻との純粋なラブストーリーが軸なのか、はたまた秘密を抱えた夫婦間の真理サスペンスなのか。

最後に彼が作る、とあるラブドールによってそれら物語の各要素を上手く収斂させていった感あるけど、物語は終始真面目で不器用な主人公・哲雄の目線で満遍なく描くため、観終わってみるとラブストーリーとしてもサクセスストーリーとしても色々な要素をちょっと欲張ってしまったというか、若干散漫な残尿感が。
前半、ラブドール職人としての道に徐々にのめりこんでいく哲雄の姿に、シンプルにサクセスストーリーとして盛り上がったかと思えば、中盤夫婦で長くいられるための”秘密”のあり方がテーマになったかと思えば後半はそうでもなく、んー、なんだったのか。
そこは夫婦のみぞ知るなのか??

②ラストの一言が個人的にしっくりこない
映画の最後、哲雄は妻のことを「いや〜◯◯◯な女」と形容するのだが、それは映画後半追い上げるように2人が△△△を重ねてるだけで、個人的には彼女があまり◯◯◯に見えなかった。

それなら映画前半、たとえば医療用人工乳房の型取りと偽った哲雄に胸を触られた園子が「実は当時こう感じていた」とか、付き合ってすぐ2人は燃え上がりすぎて羽目外してしまったとか、もっと序盤から彼女が◯◯◯だとうかがえるような描写があった方が、中盤夫婦すれ違いが増えて一度は関係にヒビの入った2人との対比もあって後半もっと良くなったんじゃ?!
個々のシーンは良いし、物語も文句付けにくい素敵な話だけにんー、ちょっと最後は乗り切れなかった。

んー、ただそこは女性監督の美意識なのかなぁ。。。
どちらかとえば蒼井優は清楚なイメージがあるので、ちゃんと◯◯◯に見せる何かがあればもっとよかったなぁとないものねだり。


タナダ監督の過去作『ロマンス』『お父さんと伊藤さん』『ふがいない僕は空を見た』など、特に近作は個人的ヒットが続いていただけに期待値もあったのかもしれないけど、ちょっと今回は好みではなかった。
ただ、出ている演者全員、演技が素敵だった!
特にピエール瀧さんの逮捕シーンは笑った。笑
ジャン黒糖

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