けんぼー

イン・ザ・ハイツのけんぼーのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
4.0
2021年鑑賞99本目。
最高の楽曲で体と心を震わせられる。現代ミュージカル映画の新たな代表作。

前評判がめちゃくちゃ良かったのですが、公開館数の減少スピードが速すぎて、慌ててなんとか滑り込みで鑑賞。

とにかく曲がとても良くて、映画冒頭からずっとノリノリで体揺らしまくり。
イオンシネマのアップグレードシートで鑑賞したので、席の間隔が広くてノリ放題。正解でした。やはりミュージカル映画は曲の良さで決まるよね。

物語は、若者の葛藤、苦悩、そして希望という、いつの時代でも普遍的なテーマを持ちながらも人種問題や移民問題などの現代の社会問題、さらにはコロナ禍の世界をどう生きていくか、という物語にも捉えられるものになっている。いつの時代でも楽しめる作品だが、特にコロナ禍の現代だからこそ、より観客の心に響くものがある。

また、「ルーツ」「夢」「アイデンティティ」「人としての権利」を求める若者達が中心の物語だが、これまでの時代を切り開いてきた先輩達から現代の若者、そしてその次の世代へとバトンを受け渡していく物語でもある。
「横の繋がり」と「縦の継承」。

この物語の中で重要な出来事が「大停電」で、それをきっかけに様々なことが動き出すんですけど、それを物語冒頭からカウントダウン的な感じで示すことで、間延びしない作りになっているんですよね。
あと、時系列的には一番未来の時点から過去を回想するような感じで物語が語られていくので、ある程度結末(ゴール)が示されており、そこに「大停電」という物語における「チェックポイント」を加えて示唆しておくことで、観客の意識もそこへ向けて物語を読み進めていくため、「道筋」がはっきりしている印象を受けました。

本作のような群像劇的な、多くの登場人物が関係する物語は下手すると方向性がよくわからなくなって間延びしてしまいがちなのですが、構成によってそんなデメリットを解消している脚本も見事。

「大停電」によってさまざまなことが変わってしまったワシントンハイツ。その中で生きる若者達が取る選択とは?
そして、偉大なる人生の先輩が彼らに託したバトンとは?

ノリノリで体を揺さぶられるだけでなく、心も激しく揺さぶられる、現代ミュージカル映画の新たな代表作だと思います。
公開している劇場がかなり少なくなってしまいましたが、劇場の音質で彼らの心の叫びを聞かねばならない。

2021/8/22