さうすぽー

イン・ザ・ハイツのさうすぽーのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
2.5
自己満足点 49点

自分ミュージカル映画が結構好きなので甘い評価になりがちなのですが...これは全然心に響かなかった(^_^;)

NYに存在するワシントン・ハイツを舞台に、キューバやドミニカ、黒人等の移民達の群像劇を描いたミュージカル。
どうやらブロードウェイ・ミュージカルが原作だそうです。


テーマ自体は良いと思います。
それぞれの移民達の抱える問題や社会背景などを描いているために登場人物達の葛藤が見えやすいです。
特に、名門大学に行っているニーナの問題について考えさせられました。

けど、今作で描かれてる社会問題や背景って最後まで観てもおじゃんになってませんか?

例えば先月観た「コーダ あいのうた」だと主人公とその家族達が抱える問題は主人公の歌への成功と同時に抱える問題への答えをしっかりと描いていました。
でも、今作は深刻な社会背景を描いておきながら、ラストでもそんなに解決してるとは思えませんでした。

あとこれは「冷たい」と思われるかもしれませんが、移民達の悩みは我々日本人とはまた違ったものであり、移民が少ない日本には身近なテーマとは言えないです。
なので、悩みは理解出来ても共感出来るとは言い難いです。


ミュージカルに関しては、
主人公やヒロイン含めたキャスト陣はかなり実力があるので「凄い!」と思いました。
特にヒロインは他の上手いキャスト以上に素晴らしく、歌った瞬間にその声に圧倒されました。
また、音楽のジャンルもサルサ等のラテンミュージックやヒップホップを撮り得れたトロピカルな音楽がメインとなっています。
移民達のルーツになっている音楽なので、登場人物達の住む世界観にものすごく合っていました。
特に、ミュージカルとしては邦画の「TOKYO TRIBE」以来久々にラップが聴けましたし、正直クオリティはそれ以上に素晴らしかったです。
また、ヒップホップは社会的な批判をメインに盛り込んだ攻撃的な歌詞が元々主流でした。
なので、説教臭くなりがちな社会批判等を音楽の歌詞に盛り込む中で一番適していた気がします。

ただ、そのミュージカルにも問題が色々とあります。
楽曲は良いものの、曲自体が多すぎるんです!
ミュージカルなので確かに歌を盛り込みますが、これは映画です。ストーリーや映像を楽しませることで初めて映画になるものです。
なのに、今作ではおよそ3分の2がミュージカルシーンでした。曲が多すぎると次第に飽きてしまいます。
また、恋愛模様等のドラマチックな場面や喧嘩シーン等のシリアスな場面、大事な名場面等もミュージカルシーンに入れてしまっている。
大事な事を話しているのに歌で言ってしまうので、台詞が入ってきません!
何でもかんでも歌にしようとせずに台詞に集中させてくれ!
ミュージカル自体の演出に関しても、街で歌ってるのにどう観てもCGバックでファンタジー感を出してしまったり、観光客に模したエキストラが主人公とヒロインのバックでダンスをしてたのに次のカットで突然いなくなったりと、不自然な演出が少なからずありました。


あと単純に、長いです!
メインキャラクターが主に4人の内容で上映時間143分はさすがに長すぎます。
だからこそ、メインの登場人物達の事を長々と描いたりしてしまったことで個人的にダレたりしました。


個人的にこの映画、観る前はかなり期待してましたし、絶対に好きになれるだろうと思っていました。
しかし、登場人物達にそんなに愛着がわかなかったのと、ミュージカル場面に違和感があったりとありとあらゆる所でノイズになってしまって正直残念です。

アメリカの批評サイトでも絶賛され、ここのFilmarksでも高評価ですが、個人的にはあまり好きになれませんでした。