撮影クリストファー・ドイルによる映像美は素晴らしい。
虫の声が鳴る、懐かしいような夏の夕暮れの川辺の景色も、閉塞感と寂寥感のある雪景色も、とても美しく、スケール感もあって目を見張るものがあった。
随所にオダギリジョー監督のこだわりや美学を感じさせる映像。
そして、主役の柄本明の味わいのある演技も凄く良かった。
年老いた孤独な船頭の佇まいが本当に絶妙で、終始この存在感に助けられて様になっていた作品だと思う。
しかし、本作の見どころはそれだけで、あとは全てが微妙な仕上がりという感じ。。
一人の船頭の姿を通して、時代に置き去りにされる人生の悲哀とか、時代の移り変わりの無情を描きたいというテーマは確かに伝わってはくるのだけど、ストーリーや台詞にそのテーマの深みや重みが表現出来ていない。心に迫るほどのものがない。
そして、無駄に豪華なキャストが次々に登場するのも今一つしっくりこなくて、逆に浮いていると感じるだけだったのも勿体無い。。
時代設定は明治と大正のはざまとのことだけど、それも上手く表現出来ていない感じがあって、細かいところがいちいち気になった。
何となく昔ばなしみたいな趣だけれど、リアルなのかと思えばファンタジー的な描写もあって、どっちつかずな作風も微妙。
寓話的にするか、リアリティーを描くのか、どっちかにしてもっとシンプルにした方が伝わったんではないかしら。
雰囲気はいいけど、深みが足りない、そんな作品でした。。
オダギリジョー監督はまた次回作以降に期待したい。