映画監督としてというよりもアーティストとしてのオダギリジョーを見た気がした。撮影監督がクリストファードイルだから自然に寄り添う映像美は凄いし、音楽もティグランハマシアンの侘び寂びを際立たせるピアノの旋律だしとにかく隙がない作品で期待値を超えてきた。慎ましい船頭の生活、船に乗る人々の口ぶりから窺える背景、新しく便利なものが生まれ古きものは消える自然の摂理。揺らめく水面がざわめく木々がこちらにメッセージを発しているかのよう。淡々と展開するのかと思いきやイメージを裏切るようなシーンが挿入されたりさまざまな表情を覗かせる。シンプルながら美しい映画だ。オダギリジョー恐れ入った。