小松屋たから

THE INFORMER/三秒間の死角の小松屋たからのレビュー・感想・評価

THE INFORMER/三秒間の死角(2019年製作の映画)
3.5
予告編で、潜入、FBI、NY市警、麻薬組織、という既視感溢れるワードが並んでいると、その時点で、内容は大体予想がつくのだけれど、つい観に行ってしまう。で、実際にそこそこ楽しめてしまう。

本作は原作が北欧小説ということだけあって、単純明快なアクションものではなく、全編、「ドラゴン・タトゥーの女」のような、陰鬱な空気が漂う。冒頭から、誰も幸せにならないし、すっきりした結末にはならないだろう、という予感に溢れる。

「味方」の裏切りと、「敵」の内部分裂、FBIと地元警察の対立、孤立無援など、これも概ね予想通り話は進んでいくのだが、役者陣の演技の力か演出か、退屈はしない。ただ、前半の刑務所への再入所の覚悟を決めるまでの「追い込まれ」「覚悟」をせっかく丁寧に描いているのに、潜入後の最初の内部工作はあっさり成功する、という時間のバランス配分には違和感があった。家族との離別の苦しさをしっかり描いたのは、続編への野心の表れかもしれないけれど。

この、過去の様々な名作のダイジェストのような定番映画に、クライヴ・オーウェンらベテランの他、ジョエル・キナマン、ロザムンド・バイク、アナ・デ・アルマス、コモンといった、今後の活躍が期待されるキャストが揃ったのは、プロデューサーの力なんだろうか。興収がある程度のラインを越えたら続編、などの約束などがあったのかも。

でも、もし、続編があり、それをヒットさせるためには、もう一枚、何か「発明」が必要なのではないかと思った。今のままだと次作は残された家族が拉致されて、それを救いに行くという単に「96時間」シリーズの焼き直しのような展開になりそう。

ただ、ジョエル・キナマンは苦悩する姿が似合うし、「ネクスト」リーアム・ニーソンの資格を十分に備えているかもしれない。今年、劇場でやけに見かけるロザムンド・バイクは、こういったハードな役柄が鉄板になってきたようで、ワンパターンにも見えるが、微妙な心理のブレも表現できていて、自分は好感。

映画で見るアメリカの刑務所はいつも本当に怖いなー。でも、ネットで調べてみると、実際に相当にすさんでいるところもあるようで、決して荒唐無稽な描写とも言えないようだ。入らないように気をつけましょうね…(笑)