maverick

15ミニッツ・ウォーのmaverickのレビュー・感想・評価

15ミニッツ・ウォー(2019年製作の映画)
3.9
2018年のフランス・ベルギー映画。実話を基に作られた、緊迫感溢れるアクション作品だ。


『007 慰めの報酬』のボンドガールであるオルガ・キュリレンコが主演しており、内容的にも興味があった。B級臭いタイトルではあるが結構良く出来た作品である。スナイパーが活躍するミリタリーアクション好きに向けての映画かと思いきや、この限定的な状況下での人間ドラマとしての面白味がある。人質となった子供を助けるために勇気ある行動をする女性教師と、救出のためにそれをじっと見守る特殊部隊の隊員たち。さらにはバスジャックをした犯人たちにも人間味を感じさせる。多くを語らずともそれが伝わる描き方が上手い。ただのドンパチ映画と思うなかれ。

1976年に発生した、ジブチバスジャック事件を基にしてある物語。当時フランスの植民地だったジブチの政治的な問題によって起こった事件である。本作をきっかけに、そうした歴史に興味を持つことにも繋がる。テロは悪でしかない。だがそれが生まれた原因に目を向けることが大切。元をたどれば結局は人と人との問題。自分たちも知らず知らずの内にその要因となっているのかもしれない。怒りを抱えた者が力で行動に出る。そしてそれに巻き込まれる被害者が出る。憎しみが悲しみを生む連鎖。それが世界中で日々起こっている。他人ごとではない。

始まってすぐに事件が発生し緊迫感に包まれる。と、思ったら特殊部隊の隊員たちが何だか軽いノリ。そういうキャラクター性とシリアス一辺倒にならないバランスとを考えたのだろうが、この演出はいらなかったと思う。よくあるハリウッド的なノリを出そうとしたのだろうけど滑ってたし、そのせいで前半はちょっと退屈だった。

緊迫感に包まれたバスの救出劇になってから一気に引き込まれる。映画の中のスナイパーはカッコ良く描かれることが多いけど、ずっと集中力を維持しなければいけない過酷な存在でもある。時には何日もじっとしていなければいけないわけで。そういう過酷さを描いてあるのも本作の面白いところ。命令に従い、いつでも引き金を引けるように最善の状態を維持し続ける隊員たちを緊迫感と共に描いている。そこからの救出劇に盛り上がりがあるわけだ。

特殊部隊の隊員たちは曲者揃いだがみんなかっこいい。彼らも平気で人を殺しているわけじゃなく、悩み苦しんでいるという描き方がされているのも良かった。オルガ・キュリレンコはアクション女優なので、どんな戦い方をするのかと思っていたら普通の教師だった。でもすごく勇ましくてかっこいい。特殊部隊の隊員と並ぶかっこよさでとても印象に残った。

原題は介入という意味だそうで、そちらがしっくりくる。こうした介入が起こらない世界を望む。そのためにはどうあればよいか。考えさせる話だ。
maverick

maverick