改名した三島こねこ

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

3.9
最強のボ=ゴンさん
最凶のボ=新しきボンドルド

魅力的な悪役は描写するのが難しいのはご存知の通り。強烈なカリスマ性と狂気を並存させたジョーカーやレクター博士。理性の権化となったラチェット看護婦や法月特別高等人。一周回って愉快な存在になった鬼舞辻無惨や雅。

しかしボンドルド、貴様はなんなのだ。

間違いなく彼を評するならば人非人というのが言われるだろうが、アビスの事情を考慮したなら彼のやっていることは(外道の所業ではあるが)一概に否定できることではない。貴重な人材である白笛や黒笛をあたらに消費することは、いずれなんらかの対応をせねばならないのだから。むしろアレで済むなら破格の犠牲だろう。

どころか彼は人身御供に過ぎない愛娘達を一人一人、子細に覚えている。彼の言動には矛盾はひとつとして存在せず、事実子供達を愛していたのだ。これは狂気や理屈ではなく、価値観が生物的な根底からして異なるとしか表現できない。

しかし彼の言動が嘘ではないというのは非常に厄介で、(この作品ではもはや御約束ではあるが)愛娘との絆がもたらした願望が視聴者の精神力を溶かしてくる。削るのではなく溶かしてくる。
"Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate(汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ)"とはダンテの有名な一節であるが、地獄の門を映画館に設置するんじゃあない。

あえて映画化した点について論じるならば、この作品においては大正解であった。アビスのスケールを人体との対比によって、漫画やTVではできない域にまで拡大している。黎明卿とレグの戦闘シーンの迫力を描写するのにも有用ではあったが、なによりこの迫力というのは評価せねばなるまいて。

実際には地上波だとモザイクかけられるからじゃないかと思ったりもしたけれど、そこは言わないでおきましょう!マルルクくんが大画面で見られてしあわせ!しあわせ!