ただ全ての生命に祝福を...
上質なダーク・ファンタジーとは
残酷な描写...理不尽な世界...
不条理な現実を突きつけるだけで描けるかというとそんな単純ではない
未開拓の世界が一見理不尽に思える
だが世界は原理原則に従って存在するだけ
理解が及ばないからそう見えるだけ
最終的にはそこに存在する人間の業
残酷なのは意思を持った人間の方だと
その些細な事をどれだけ丁寧に描けているかが作品の世界観のリアリティにも繋がってくる
このメイド・イン・アビスはとにかくその描き込みが緻密
(TVシリーズの続きなので、あくまで最終回までを観終えていることが前提)
登場人物の表情や所作、台詞の細かなところに描かれるリアル
倫理観とは...
本作ではその象徴として登場するボンドルド卿
彼の行いは残虐非道でそれを彼自身も常人の価値観との対比では理解している
しかし彼はその残忍な行動に特別な感情を持ち合わせていない
探究心という自分の原理原則に従っているだけ
彼の中では生きる行為そのものなのだ
彼にとっては呪いも祝福も等価値なのだから
それは自分の肉体に対しても同義で、
他人からの敵意に対しても怒りの感情を抱かない
全てを喜びに近い感情で受け止める姿は理解を超越した神にも近い存在に映る
それを常人は恐ろしいと思ってしまう
人間の探究心は麻薬のように中毒性があって更なる深みを目指してしまう
失ったものは元には戻せない
時間は非可逆で
ただ前に進むことしか出来ない
それでもこの作品を観るたびに思う
世界はただひたすら平等なのだと