ロマンを追い求めるため狂気に身を委ねなければいけなかった大人
と
純粋な思いのみでロマンを求める子供
の対立を描いた傑作。
今回の敵、黎明卿 ボンドルドは最低最悪のクズ男。
アビスの魅力に取り込まれた彼は、人としての倫理観、価値観を完全に失ってしまっている。
愛する娘に対しても人間らしい愛情表現ができていない。
そのあまりにも人道から外れた行為を行っているからこそ彼はこの物語の悪役でいられる。
だが、実際何かを突き詰めるということは少なくとも何かを犠牲にしたり、回りから奇異な目で見られたりするものではないだろうか。
スポーツ選手などの過去の逸話なんかがそれに当たるのでは。
けれど子供の純粋さ、素直さはいつしか大人の狂気すら乗り越えてしまう。
その幼い輝きに負けしまった、大人たちは子供たちに道を明け渡す。
その真っ直ぐに突き進んだ先でどのような結末が待っていようと...
そうやって子供は大人への階段を登っていく。何らかの犠牲によって道は成り立っていることを知るのだ。
そんな残酷だが、どこか美しさすら感じる物語を圧倒的な美術と美麗な作画で楽しませてくれる。
ただ、一本の映画としては不満も少々。本作はスピンオフとかではなく、がっつり本編の話なので、最後まで明かされない謎、未解決案件が多々出てくるため、わりとモヤモヤが残る。
あと、この作品に限らず本編の一部を映画として公開することに疑問を感じる。
かといってこの話をTVでやれるかは怪しいけど...