TMDiary

王様になれのTMDiaryのレビュー・感想・評価

王様になれ(2019年製作の映画)
3.0
①役者
岡山天音。少しクセのある顔をしていていろいろな役をやれそう。というか山中さわお役かと思ってた。
②演出
有名アーティストが本人役で出ていておもしろい。The Predatorsが並んでラーメン食べてるとか。最後のライブシーンの演出はユカリが死んだかと思う。
③総合
the pillowsは当時まだ無名だった頃やけにプッシュしているラジオ番組があってそれで知って、高校や浪人時代ほんとによく聞いた。ちょうど世間的にも少しずつ知名度を上げていった第3期の頃。「Please Mr. Lostman」で知り、「LITTLE BUSTERS」「RUNNERS HIGH」「HAPPY BIVOUAC」はリリースされてすぐ購入していた。こうアルバム名を並べてみると、苦悩→攻める→いい気分→喜びと彼らの軌跡が分かりやすいことに気づく。
曲にしても最初は暗い曲が多いが、だんだんと前向きになってくる。転換期真っ只中の「LITTLE BUSTERS」 では「ONE LIFE」で「どんな靴を履いてても歩けば僕の足跡」と歌い、「HYBRID RAINBOW」で「ここは途中なんだって信じたい」と自分の信じた道を苦悩しながら進んでいる。でも「HAPPY BIVOUAC」の頃には「キミの夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで走ってきた」と「Funny Bunny」でその道に光が差してきたことを表現している。
ちょうどこの頃の自分らの道について、音楽をカメラマンの写真に置き換えて映画にしている。若い頃の自分を書いたと山中さわおは語っているが、苦悩の殻を破ったあたりはきっと音楽の道で同じような経験があったんだろうと想像できる。周りに対して素直になることや、自分が主人公ではなくて他の人のためになること(山中さわおの言葉を借りればエゴのコントロール)の大切さにきっとその頃の山中さわお自身が気づいて自分を変えることができたんだろう。ちょうどその頃の歌詞にも「扉の向こうには約束なんてない でも行こう 生まれ変わる朝が来た」(「アナザーモーニング」)というフレーズがある。
山中さわおが描きたかったものが「ピロウズがどういう人たちに愛されたバンドなのか」という点だったという。映画の主人公は最初ピロウズなんて知らないのだが、だんだんとのめり込んでいく。それは好きになった女性が好きだからというだけにも映ってしまうのだが、ほんとうはピロウズの音や歌詞に自分の人生を重ねて心が動かされたからなんだろうと思う。苦悩しながらも自分の道を進んでいくこと、そしてそこに光が差すのは自分が変われるかどうかだということ。自分も高校や浪人という進む道に不安が付きまとう日々の中で聞いたからこそ心に刺さったんだろうなと今思うと思う。
自分がよく聞いたピロウズ第3期のアルバム数枚の流れを1つのストーリーにしたような映画で何だかうれしかった。ピロウズ好きではない人が見たら何とも思わない作品なんだろうと思うけれど。
TMDiary

TMDiary