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つつんで、ひらいてのsheのレビュー・感想・評価

つつんで、ひらいて(2019年製作の映画)
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4月8日 菊地さんの訃報を知る。

本屋でユリイカを手にして(その表紙と目次の仕掛け、今まで開いたことあるユリイカと全然違って面白かった。装幀は菊地さんではなく、水戸部さんだった。)ずっと観ようと思いながらの、こちらのドキュメンタリーをようやく観た。

一番印象的だったのは、
“達成感がない”とはっきり語られていたこと。
それから、手の動き。

紙の本は小説の身体、肌。
紙の本は、「もの」。

私はデジタルに生きる世代なので、アナログの世代の人たちの美学や哲学に強い憧れがある。
同時にその世代の人たちがこの世を去っていくことに焦りや不安も感じる。
いつまでも昔のように、とはどんなことも難しいと分かってはいるけれど、本のことで考えるならば
私は「もの」として、側にお守りとして置いておきたいと強く思う。
読むだけの機能としてではなく、「もの」としてのパワー、書き手からデザインする人、印刷の紙、製本されて本屋に並ぶさま。沢山の人の手が重なって、その流れを五感で得られることの救いがあると思う。でも、とても贅沢なものなのだとも思う。

ただ情報を整えデザインとして置き換えられたものを巻かれたのではなく、物質性として必要なことを考え ”拵え”られた装幀は、人間と人間のつながりに大きな影響を与えるのだと、ドキュメンタリーを観ていて希望のようなものを感じ泣きたくなった。
あまりにもスピードが速くなった現代の中で生きていても、役目というのはそれぞれにあることを忘れてはいけないと感じる。

菊地さんのご冥福をお祈りします。
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