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道草のnatsuのレビュー・感想・評価

道草(2018年製作の映画)
4.0
4人の障がい者。

最初に登場するリョウスケくん。絵がすごい!
チラシの絵も文字も彼の作品。このほわっとした絵だけでなく、本編に出てくる絵の数々。彼の眼に映る風景や日常の切り取り方がまあ、素晴らしい!!
障がい者に目が向けられるようになって、アールブリュット的なもの、アートがもてはやされている時代。わたしも沢山の彼等のつくるアートを見てきたけれど、リョウくんの絵は、障がい者という視点抜きにしても突出しているように思える。
彼の身につける物(カラフルなんだ〜)とか、好きなもの(ポップなぬいぐるみと一緒だ)とか、電車の交差する風景と音への執着とか、見ていると素敵なものを生み出す素地やこだわりのようなものをたくさん持っているように感じた。
一輪車もボードも上手い。十数年来の付き合いの介助者さんが楽しい、と最後につぶやくところに納得する。


と、素敵な部分を書いてみたけれど、やはり、この病気や仕事の大変さは一筋縄ではいかない。わたしも福祉に関わっていた1人としてすごくわかる。この4人ともヘルパーさんは男性。もちろん、同性介助のルールに基づいたものでもあるのだろうけれど、重度の障がい者には、男性でないと務まらない体力や暴力的問題(他害による怖さとか)もつきまとう。


そういった他害の大変さも大きく提示していた。次に登場した父と住む引きこもりの彼。家は傷だらけになり、罵声が飛び。重度ゆえに、ほんとにほんとに家族がしんどい。でも自分をコントロールできない本人が一番しんどい。そんな中始まった、介助者と一緒の小さな外出が彼の楽しみで安心で。よかったな、と思える散歩の様子。でもその状態は長くは続かず、結局精神科への入退院を繰り返す。前の施設で職員に暴力を振るわれて退所した話もあったが、その職員にだってどうにもできないしんどさがあったのではないかと想像すらできる。

ここまで書いたら、しんどくなってきた。。
とにかく、この事業を続けているヘルパー事業所の方たちに頭が下がる。どうしていけばいいのかを試行錯誤しながら、そして地域の理解を得ながら(コンビニのガラス破っちゃうのびっくり。それでも、利用していくはず。そんな関係づくりもあるのだと思う)わかってもらいながら、ここまでやってきて。これからもやっていく。

彼らたちも介助者たちも歳をとっていく。10年以上の付き合いと話す介助者も複数いたが、長い人生変化することもあるだろう。
長く関わっていてほしい。安心できる関係を続けてほしい。みんな笑っていてほしい。そう思わずにはいられない。

世の中が変化していて、以前よりは障がいのある人への理解はすすんだかなとは思う。
それに、最近はさかんにSDGsとか言い始めているから、自分と違う人たちを認めていく風潮は、加速していくように思う。
これからだ。もっと知られるべき。
テレビをつけたら、こんな映画やドキュメンタリーが普通に流れてくれたらいいのにな。Eテレだけじゃなくてね。
知的障がいや精神障がい、自閉症、を伝えるものとして、これはとてもとっかかりやすい映画だと思う。ぜひ。
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