常盤しのぶ

レオンの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

レオン(1994年製作の映画)
4.0
『あなたが一番好きな映画は?』という鉄板話題への回答として毎回と言っていいほど名前が挙がってくる本作。殺し屋の元に転がり込んでくる女の子という設定は私も大好きだ。『今この部屋から飛び出せば私は殺されるぞ。それでもいいのか?』などと自分の命を顧みない脅しをかける強かなガキ、好き。

殺しの術を教えるは教えるが、実際に人を殺させようとはしないレオンの優しさが沁みる。しかし、その優しさを知らず弟の仇を討たんと願って止まないマチルダも、若さゆえの活力という感じがしてとても良い。殺しの現場に同行させるが、殺す瞬間を見せないのも彼なりの優しさと言えよう。

そして何よりゲイリー・オールドマンの怪演よ。明らかな薬物中毒者でありながら平静を装い麻薬取締課に籍を置き、麻薬の動向を手中に収めるのが古典的で面白い。ヤク中にありがちな身体の痙攣をあそこまで自然に表現できるものなのだろうか。あまりの暴走ぶりに部下にもドン引きされているのがまた愛おしい。ベートーベンが好きらしいが、ああいう手合が音楽を嗜むのはあるあるなのだろうか。やはり私の推しは演技力が桁違いに素晴らしい。

どう見ても12そこらなのに、本人から18と言われてから他人にも18で通そうとするレオンが可愛い。トニーも呆れていたし、そういう微妙に抜けたところがあるからこそトニーもレオンに仕事を与え続けていたのだろう。金のない大学生に皿洗いをさせて餃子を食わせる、みたいな。そういう言外の優しさが本作の魅力なのだと思う。トニーはレオンの金を使い込んでいたのだろうが。

色を知った女と、生きる理由を見つけた男。二人が唱える愛の言葉は、内に含まれる意味が異なっていたのだろうと私は思う。それに対して私には否定する権利も理由もない。二人の物語は、多少形を変えてこれからも続いていく。