エミさん

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのエミさんのネタバレレビュー・内容・結末

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

東映試写にて。
観終わった時、「ああ、そうだ。20年前、昔はチュウさんに感情移入して読んでホロホロ泣いたんだったなぁ…」ということを思い出しました。
映画化をきっかけに20数年ぶりに思い出した帚木さんの原作。「何故、今、映画化なんだろう?」と思うほど、もうすっかり内容を忘れてしまっているが、やっぱり良い作品は色褪せないなぁ〜と思わされました。久々、邦画を観て感動させられました。

大抵の原作小説がある邦画作品には失望させられてきているので、この作品も観る前から、きっとそうであろうとタカをくくっていました。それは過去、観てきた映画の出来が悪いわけではなくて、重厚な小説の世界を平均2時間で描くこと自体が物足りず許せないからなのです。ですが、この作品は脚本が上手くまとまっていて、とても心地良かったでした。フライヤーを見ると、平山監督が脚本を担当している。結構分厚いあの原作を2時間で収めるのは大変だったろうなぁと思いました。

絶妙なキャスティングにも、グッときました。
笑福亭鶴瓶氏の、何かを抑えて淡々と生きているフリをしている人を演じる様子は段々円熟してきて、役柄その人そのものに思えるほど自然でした。あの存在感は準主役なのにもう主役でしたね。
小松菜奈さん。可愛くって。泣きの演技が上手くなったなぁ〜と感心しました。でもまだ『溺れるナイフ』夏芽な印象が強いです。
脇を固める個性的な病院のキャラクター達も特別でしたね。木野花さん、平岩紙さん、そして大好きな渋川清彦氏。この人達が出てる時点でもう、「なんかあるな」と想像できるくらい出オチ感がありますね。田窪くんと駒木根くんコンビも味があって良かったです。
。, ・:*:・(*´▽`*) , ・:*:・

秀丸さんは元々は真面目で情が深い人。妻の不貞に逆上して我を忘れてしまった後、母の行く末を思いやっていたあのシーンは、そんな人柄がよく現れていたシーンでした。

人は誰でも多面性を持っており、その時々で必要な自分を無意識のうちに演じ分けている。愛情あふれる部分の裏には逆上するほどの暴力的な部分があったりする。誰がその人の、どのスイッチを押すかで、その人の印象が違ってくるのだ。
人の地雷を踏まずに平穏に生きていきたいけれど、そうはいかないのが世の中。そんな愁いをこの作品はよく表していました。2019年邦画ベスト1の称号!!