slv

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのslvのレビュー・感想・評価

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.6
精神病院を舞台としたお話なので、かなり重い。

冒頭から死刑執行のシーンとか、飛び降り自殺を図るシーンとか、けっこうショッキングでびっくり。

しかし、それぞれの様々な事情でこの精神病院に来た者たちが、寄り添い合い、支えあい、まるで家族のような絆や繋がりが生まれていくという関係性の描写は穏やかで温かくもある。

本当の家族からは得られなかった優しさを誰かに貰ったり、ここにちゃんと自分の居場所があることが、それぞれの傷を癒し、不安や恐怖から守ってくれているようでもあって。

酷い目に遭い、心身共に大きな傷を負ったままここに居るしかなかった18歳の由紀が凄く不憫だったけれど、梶木やチュウさんたちと触れあう中で少しずつ自分を取り戻していくような由紀の姿には救われた。
しかし、そんな穏やかな日々は束の間で、またしても由紀はショッキングな悲劇に襲われる…。これがあまりにもつらすぎた…。

由紀を演じた小松菜奈ちゃんの、体当たりの演技が素晴らしかった。
この役、本当にしんどいし難しい役だと思う…。よくやったなぁ。。
この小松菜奈ちゃんの演技にはしっかりと説得力があったと思う。だから観ていくうちに凄く引き込まれていったし、法廷の場面では思わずボロ泣きしてしまった。。

綾野剛さんも『楽園』の時と少し重なるような感じの役で、今回も見事に役に入り込んでいるように見えて凄いと思った。

そして鶴瓶さんは、由紀やチュウさんに何気なくかけるような言葉が凄く優しくて、独特の人情味があったところがとても良かった。

しかし、ストーリーや演出がところどころで大げさだったり甘さが目についたりしてツッコミどころも多く、時々醒めてしまう部分もあったのがとても残念。

役者さんたちがいい演技をしていても、設定にいまひとつリアリティーが足りなかったのがとても惜しい作品だなという印象でした。

それでも、ラストに向かって少しずつ救いが見えてきたのは良かったけれど、最後の鶴瓶さんのあのくだりは蛇足だったんじゃないかなぁと、私には思えてしまいました…。
slv

slv