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閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのsingerのレビュー・感想・評価

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.4
やるせなさ、やり切れなさを、劇中ずっとずっと感じさせられて、
観ていて胸が苦しくなる思いだったけど、最後の最後に、少しだけ光が見えて、
それが確かな心の絆の温かさに根付いているような実感があったので、
いい作品を観たなぁと思えて、それが良かったです。

そして、キャスト陣。
笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈。
日本アカデミー賞でそれぞれ、優秀賞に輝いただけあって、
作品の伝えたい事をしっかりと受け取って、それを役柄の中で上手く表現されていたと思いました。
個人的には、今回は小松菜奈が特に良かったですね。
結構、奇抜な役柄が注目されがちだった彼女ですが、今回の役柄はどちらかと言うと、複雑な心情を抱えて、心を閉ざしてしまった少女を、抑制の効いた“静”の演技で、とても上手く見せてくれたなぁと思いました。

物語の後半、彼女が橋の上から夜明けを見つめるシーンは、本当に良かったですね。
自分も、時々ふと、何気ない街の風景や、空の色や、雲の形や、
そういう街の色彩に、心を洗われるような気持ちになったりするんですが、
このシーンでは、そんな瞬間の魔法のようなものがしっかりと封じ込められていて、それを見つめる彼女の表情が、本当に何とも表現し辛く、“とにかく見て”って言いたくなる位、素晴らしくて、最近観た映画作品の中でも、凄く印象に残るシーンでした。

そして、レンタル版にもメイキング映像が45分も収録されているのは、とても嬉しいトコでしたね。
メイキングを見てしまうと、精神病棟の患者を演じられた方々の、素の表情が見えてしまうので、やっぱりこれは演技なんだなぁと、少し観た後の気持ちを覚まされるような部分もありましたが、
主要キャスト陣のインタビューなんかもあって、見応えがありましたね。
中でも、平山秀幸監督が、小松菜奈の事を“宇宙人”と評して、監督の価値観を超越した演技が出来る女優さんだと評していたのが印象的でした。
オールアップ後の彼女のコメントに、この役柄に対する思いの丈を感じられたのも良かったです。