一人旅

ストーリーテリングの一人旅のレビュー・感想・評価

ストーリーテリング(2001年製作の映画)
3.0
トッド・ソロンズ監督作。

アメリカの奇才トッド・ソロンズが傑作『ハピネス』(1998)の次に撮った異色の風刺コメディです。ポール・ジアマッティ&ジョン・グッドマンら個性派の実力派が妙味のある演技を魅せています。

トッド・ソロンズは人間の嫌な部分を容赦なく炙り出す映画作家ですが、本作にもソロンズ節の冷めた人間観察が見て取れます。「フィクション」と「ノンフィクション」の2部構成となっていて、1980年代が舞台の第1部「フィクション」では脳性小児マヒの男子大学生と付き合っている女子大生が黒人教授に乱暴なセックスを強要される様を描き、2000年が舞台の第2部「ノンフィクション」では駆け出しのドキュメンタリー監督の新作映画の題材に抜擢されたユダヤ系中流家庭の日常と悲劇を淡々と見つめていきます。

人間の歪んだ欲望と暴力、潜在的な差別意識、親のエゴと子の無気力、若者の感情の平坦化、無知ゆえの残酷さ…と2つの無関連な物語を通じて人間の愚かな本質をシニカルに浮かび上がらせたトッド・ソロンズ流人間風刺劇の異色作で、余りにもブラックすぎる結末には“嫌なものを観た”満足感に浸れます。
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