Marie

クイーン ヒストリー 1973-1980のMarieのレビュー・感想・評価

3.0
年を順に追いながら、バンドとしてのQueenとQueenの音楽について、6人の評論家達が語るドキュメンタリー。メンバーの人物伝や音楽の誕生秘話といった歴史ではなく、音楽レビューを編集したものだ。
リアル世代ではないため、当時のQueenがどのように受け取られていたかを知りたくて鑑賞(レンタル)。

とにかく、曲によって評論家達の好き嫌いが激しく別れる。70年代のヒット曲を紹介しているのに、全員が大絶賛した曲は、たしか4曲だけだった。これは冒頭でアナウンスされたように、Queenが「ロック史上、唯一無二の存在」で「4人の豊かな才能が一体となり、大胆かつ多様な作品を生み出す」「ジャンル分けが進んだ時代の異端児」だったことに原因があると思う。好きなジャンルは聞く人それぞれ違う。この曲は好きだけど、あの曲は嫌いということが、他のミュージシャンより出やすいのかもしれない。

もう一点、当時のイギリスの情勢とQueenが目指していた音楽作りにズレがあったことも分かった。70年代のイギリスは、冷戦やオイルショックといった世界情勢と政策の影響で、経済活力が衰えていた。社会全体に余裕がない中、音楽は簡素なコードで激しく歌うパンクロックが人気となっていた。そういう状況の中で、作り込まれ磨き上げられた音楽を出してヒットするQueenは、余裕しゃくしゃくに感じられ「利己的」に見えたのかもしれない。
ドキュメンタリーの中には、ほんの少し、フレディのインタビューも混ざっている。フレディが語るセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスとの小競り合い(想像するだけでコワイ…)は、そういう所から来ているんだろう。自分達の音楽がなかなか認めてもらえず、Queenは随分苦労したのだと思った。
一方、70年代の日本は、戦後の貧しさがようやく解消されてきた頃。自動車産業をはじめとするものづくり産業が活気を見せはじめ、余裕が出てきた頃だ。Queenの初来日を大歓迎できた理由の一つには、そういった情勢も無視できない要因であると思った。

まぁ、でも、いろいろ考えたけど、結局は、ごちゃごちゃ考えずに、Queenの音楽を楽しめばいいだけなんだと思う。
Marie

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