SF映画の古典にして頂点と言われる「メトロポリス」。
製作時の1927年から約100年後の世界が舞台だけど、そもそもこの映画が91年前の作品だから、描かれている世界は現代からすれば 、ほんの少し先の未来ということになる。
ちなみに個人的にはIVCから発売された「メトロポリス」での淀川長治先生の解説で「スターウォーズ」のC―3POのことを相当ディスっていたのが印象深い。
C-3POはもともと本作に登場するヒューマノイドロボットを基にデザインされているのだが、淀長先生が「コロッコロッコロッコロ」って言ってC-3POの物真似をするのがやたら可笑しかった。
確かに神秘的な本作のアンドロイドに比べちゃうと、コミカルさを前面に出したC-3POは正直ダサいのだが、そもそも立ち位置が違うキャラなのだから仕方ないように思うのだが。
Filmarksに リストされている「メトロポリス」は90分版と153分版だが、自分が手元に持っているのはどちらでもなく123分版。
ちなみに1927年当時のプレミア上映では210分だったそうな(これは現存しないそうな)。この時代のサイレント映画はバージョンによって尺が全然違うのでどれを観ればいいのか本当に困る。
第二次大戦の混乱などでオリジナルフィルムが散逸してしまっていたが、1983年のジョルジオ・モロダーのプロデュースによる再編集版を経て、2002年に新たに発見されたフィルムを追加したのが自分がもっているバージョン。
欠落しているシーンはト書きで展開を説明している。それでそのあとまた改めてフィルが発見されたのを追加したのが最長の153分版というわ け。
内容と言いヴィジュアルと言い、モノクロでサイレントでなければ本作は今でも通じる作品だと思う。
アンドロイドがマリアの姿に変身する場面の合成技術なんて今観ても遜色のない出来栄えで驚く。
それまで分断されていた階級社会において、支配者階級出身の青年が労働者階級出身の美しい女性マリアに恋し、やがて支配者と労働者に分断されている世界に疑問を抱く。
息子が段々と感化されていくことを危惧した資本家の父親が旧知の科学者に相談し、労働者たちが団結しないようにマリアを亡き者にしようと企む。
ところがこの科学者はかつて愛した女性(要は主人公である青年の母親)をこの父親にとられてしまったことを深く恨んでいて、労働者たちを混乱に陥れる と同時にこの親子にも復讐しようと狙っていたのだった。
いやぁディープですね、闇ですね。
この辺の対立構図なんて今から百年近く前の映画とは思えないほど作りこまれている。
またここ最近の過労死問題のニュースを見るにつれ、「頭脳(資本家)と手(労働者)をつなぐものは心でなくてはならない」という本作に込められたメッセージ(その言葉を具現化したようなラストシーンが良い!)は今もなお生きつづけているように思う。
■映画 DATA==========================
監督:フリッツ・ラング
脚本:テア・フォン・ハルボウ
製作:テア・フォン・ハルボウ
撮影:カール・フロイント
公開:1927年1月10日(独)/1929年4月3日(日)