えびちゃん

メトロポリスのえびちゃんのレビュー・感想・評価

メトロポリス(1927年製作の映画)
4.0
" 心が、頭脳と手を結び付ける仲介者となりますように "
えー!なにこれすごい!1926年製作、1927年公開ですって?CGなんてもちろんないのに、限りある資材や技術、発想力・想像力だけで未来のディストピア観を構築・画として落とし込むその心意気に拍手だわ。思わず1926年に日本は一体なにをしていたのかと調べてしまったわ!製作はまさかあと数年で舞台の年を迎える現代においてこんなに評価されるとは思ってもいなかっただろうなぁ。
148分の完全復元版を鑑賞。
2026年未来都市メトロポリスにおける二極化した社会を描いたディストピアSF。冒頭の "頭脳" は知識を持つ上層階級、"手" は下層に住む労働者階級。
偽マリアの悪女っぷりがもう最高。劣情もよおす扇情ダンスの悪魔的なこと!そこから引き出された労働者の日々の鬱屈をぶちまけていく怒涛の反乱・火あぶりはかなりの迫力。何が何だかわからんけど、この鬱憤を晴らしてやる!っていう感じの大衆心理はその後ドイツが辿るユダヤ人迫害の心理とそっくり。この作品を送り出した後、ドイツは暗黒の歴史をひた走っていくのか…と思うと縮み上がる。わたしもこの世界にいたら間違いなく労働者側でうおーっと蜂起していただろうな。
実は半分近く寝てしまったのだけど、どのタイミングにおいても、ハッと起きるたびに目に映るシーンが今何をやっているのか問題なくわかるというのがサイレントならではなのか地味にすごい。映画というものがいかにセリフに頼っているのかよくわかった。半分近くはさすがに寝すぎではあるが…。
SFにかなり苦手意識があるのだけど、この迫力と熱意に圧倒された!スクリーンで観ることができてしあわせ!
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