アンダーシャフト

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

3.3
フィンランド発の戦争映画。
全体の印象は、虚飾なく真摯に戦争を描いた感が強かった。

ソ連との「冬戦争」に敗北し、領土を大きく奪われたフィンランド。その領土を奪還すべく、1941年再びソ連との戦争に突入し、3年以上もの間戦火を交えるという物語。

「名も無き兵士」という題名の通り、ソ連軍と戦うフィンランドの兵士数名を中心にストーリーは進みますが、カリスマ性のあるヒーローが活躍する訳ではありません。
フィンランド軍は、ベテラン兵士と新米兵士の混成軍。兵士一人ひとりに戦地で戦う意味や思いがありますが、彼らに唯一共通する気持ちは「生きて帰る」ただそれだけ。
そんな彼らが、銃弾の飛び交う戦場で恐怖に潰れそうになりながら必死に引き金を引き、重機関銃を背負って行軍し、怯え疲弊しながら仲間を助け、時に呆気なく命を落とす。
これらを通して、戦争が持つ絶望感と無慈悲さが、寒々としたフィンランドの自然を背景に淡々と描かれています。

北欧の大地に砲弾が炸裂し、黒い土煙を上げる様子がとてもリアル。ナパーム弾のように大きな火柱が上がることはなく、大きな爆発音とともに凍った大地が吹き飛び抉られる様は、砲撃の生々しい恐怖と緊張感が伝わってきました。

名誉のためでなく、生きるために戦い続け、ソ連との停戦にこぎ着けた兵士たちの、何とも切なく虚無感の残るドラマです。フィンランドやヨーロッパの歴史に詳しければ、もっと深い感慨があるかもしれない…

〈余談〉
話の途中、若い兵士たちがある家を訪ねていくシーン。
中には複数の若い女性がいて、お茶を飲みながらみんなで談笑。そのうち、一人の美人さんと若い兵士がいい仲になってしまう。
美人さんを忘れられない兵士は、プレゼントを手に一人で家を訪ねるが、そこには別人が住んでいて、若い兵士はポカーン…
これって、何だったんだろう…