ワンコ

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のワンコのレビュー・感想・評価

4.5
【ナショナリズムとは何か】

この数年に及んだ”継続戦争”のフィンランド兵士の戦いや戦場での日常を見つめ、一体、人は何のために戦うのか、何のために戦うことが出来るのか、それはナショナリズムなのか、違うものなのか、そんなことを考えさせられる作品だ。

フィンランドは、ソ連との冬戦争で国土の約10%をロシアに譲り渡すことになった。
スターリンにとっては、ソ連第2の都市レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)までの国境からの距離が近いことから、フィンランドに領土を交換しようと持ちかけ、さまざま条件や難癖をつけて、受け入れられないと分かると電撃的にフィンランドに侵攻して、領土を奪取してしまったのだ。

しかし、その後もフィンランドはソ連の脅威を感じており、第二次世界大戦で、他国の支援を得づらくなったことで、ナチスドイツから武器を調達したところ、再び、両国の関係は先鋭化し、”継続戦争”と云う形で戦うことになってしまう。

ただ、フィンランドも冬戦争のソ連の電撃的な侵攻を経験していたことから、周到に準備は行っていて、更に、この作品にも描かれているように、最初はフィンランド軍がよく戦い、一時は失った領土を回復するなどし、結局は領土回復は諦めざるを得なかったものの、戦争の物資や人的被害については、ソ連側がフィンランドの3倍もあったと言われている。

この作品で描かれる物語では、開戦当初は、兵士たちも愛国心を掲げていたが、戦況が悪化し、撤退を余儀なくされる段階で、次第に兵士の気持ちにも変化が生まれていく。

唯一異なったのは、ロッカで、当初から、お国のためなどとは考えておらず、家族や、ソ連に奪われた自分の土地を取り戻すために戦っていた。祖国のために戦ってなどいなかったのだ。

こうした愛する人や家族のために戦い、生き残らなければならないことの意味と重要性を次第に理解していく仲間の兵士達に対して、祖国のために命を賭して犠牲になることを厭わず戦うように促す上官。

家族を想い、更に生き残ることが必須のはずのロッカが、仲間を助けるために川で銃撃を受ける場面は象徴的だ。
人とは本来こうしたものなのではないのか。

こうして、もともとの想いとは関係なく、人は倒れ、死んでいくのだ。

それが戦争なのだ。

今のウクライナと重なる人も多いに違いない。

ナショナリズムを吹聴する士官は実際には戦わず、家族や愛する人を守ろうとする兵士が前線で戦い傷付き、命を落とす。

侵攻する、守るに関わらず、戦争とは実はそんなものかもしれないとさえ感じる。

ウクライナ戦争を目の当たりにして、敵地攻撃能力とか、防衛費増額とか、そんなことばかり言って、プーチンをファーストネームで呼び合う仲としていた安倍晋三は、プーチンと話そうともしない。こんな輩に一番注意を払う必要があるのではないだろうかと思わせられる。
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