イベリー子豚

燃えよ剣のイベリー子豚のレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
4.1
シビレましたね。

これはある意味『クローズZERO』。

時代劇のようで
長回しやワンカット、パノラマもあり
モノローグにナレーションを
役者の会話で進行する、BGMにクラッシクなど
現代劇のような演出も多い。

殺し合いや暗殺の連続なのに「悲壮感」よりも
「男子校の部活感」が勝つ、不思議な印象です。



詳しくはありませんが
今だかつてない「新撰組」の描き方でしたね。

ほぼ「鬼の副長・土方歳三」1人にフォーカスした
狭い世界のストーリーなのに
目まぐるしく移り変わる幕末の
スピード感は情報量が桁違い。

上映時間も含めて『DUNE』と肩を並べております。
 

キャスティングの時点で信頼性はお墨付き。

主演のマスター・オカダはプライベートで
確実に5人は殺しているのではないでしょうか。
佇まい、身の運び、威圧感、歴戦の剣豪のオーラが
尋常じゃないです。
会津の方言と江戸喋りのギャップや
独特のサンドウォークもさることながら
「ぶっさん」ライクな
天性の人懐っこさも魅力的でした。


あと個人的に感動したのは涼介さん。
山田くんの沖田総司は過去イチの
沖田総司では。
醸し出される天才ぶりと物腰の柔らかさ、
人との距離感の取り方なんか
パブリックイメージそのまんま。
出来れば「以蔵」役の虹郎くんと新旧対決が見たかったですね。


また一瞬だけのシーンの為だけに
名優たちが花を添えてる贅沢さですよ。

本編に直接は関係ないけど「名刀」も
多数出演してるので刀剣マニアには堪らないかも。

史実とフィクションの境い目を
判断は出来ないですが
こういう遊び心のある小ネタこそ
物語に深みがでますね。


とにもかくにも
専門的な固有名詞や古語、方言、
公家ことばが入り乱れる複雑な会話。
こちらに隙を与えない、深さも濃さもある
エピソードの波状攻撃。

歴史や原作を知らない人間には非常に厳しい
長丁場のになりますが
それでも「人間・土方歳三」の侍の在り方、
愚直で猛々しい生き様は必見の価値があります。