ユーライ

燃えよ剣のユーライのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.5
緩急を欠いて同じテンションのまま全編が流れるから印象に残りづらい弱点が結構露骨に出ている。原作が長編だから圧縮したせいなのか、土方のモノローグをナレーションとして使うことで男一代記としては筋が通っている、ストップモーションで許せてしまう。相変わらず数箇所は演出意図が理解不能な部分があって、山崎がまくし立てるキャラ付けもどう機能しているのかよく分からない。まぁその珍妙なバランス感覚を目当てにしているから文句を言ってもしょうがないのだが、時代劇なのに現代の若者的な砕けた喋り方を多用しているのは批評として成立しているか。近藤土方沖田の関係性の距離の近さがBL的にとても美味しい。そこに芹沢鴨が入ると脳破壊になるとか、男の集団としてのガキっぽさだったり、ホモソーシャル加減に対する女性の一歩引いた現代的な視点といった要所は何だかんだ押さえている。キャッチコピーのような熱い気分にはならなくて、土方が理想に準じた熱き男というよりは単なる馬鹿に見えるのが致命的。味方敵の理念を明確化していないことから発生していると思われる。通路、一本道的な場を登場させて新選組の性格を表しているのは良い。沖田との別れも近藤との背中越しの別れも、決められた運命として揺るがせないのだ。
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