Inagaquilala

燃えよ剣のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.9
近年、すっかり大予算の作品の監督として定着した感のある原田眞人監督だが、デビュー作は自らの映画少年ぶりをそのまま作品にしたような自伝的作品「さらば映画の友よ インディアンサマー」(1979年)だった。直接の面識はなかったが、知人の知人であったため、その作品を試写で観た記憶がある。まさか、その後、ここまでのメジャー監督になるとは、実は少しもそのときは思わなかった。この作品は、前々作の「関ヶ原」(2017年)に続く、司馬遼太郎原作のものだが、大規模な合戦のシーンが少ないぶん、人物の細かい描写に力点を置いたせいか、スペクタクルというより人間ドラマの味わいが強い。自分としては、「関ヶ原」がいまひとつピンとこなかったせいか、この司馬良太郎の小説のなかでも一二を争う人気作品を、無難に映像化しているという印象だ。

主演も「関ヶ原」と同じ岡田准一だが、アクションの見せ場は、むしろこちらのほうが多く、彼の殺陣もなかなか見事だ。岡田演じる土方歳三と対立する芹沢鴨役を伊藤英明、盟友である近藤勇役を鈴木亮平がそれぞれ演じており、これもなかなかいいキャスティングだと思う。「日本のいちばん長い日」(2015年)でも感心したのだが、多くの登場人物が出入りするこの手の作品、原田監督は実にうまく整理して、物語化している。そこらあたりは自ら脚本も執筆できる強みだろう。オールスターキャストの作品をつつがなく撮れるという点では、いまの日本の映画界のなかでも稀有な存在ではないだろうか。
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