おときち

窮鼠はチーズの夢を見るのおときちのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
3.2
カールスバーグ×2
シンハー×1


劇場で見た予告編の成田凌が魅力的で気になっていた作品。
漫画が原作ということも知らなかった。
行定勲監督の映画も初めて。
イメージだけで申し訳ないけど『世界の中心で、愛をさけぶ』『ナラタージュ』とかは「観たい」と思ったことないし、『リバーズ・エッジ』は原作好きだから「観ない」って思ってる。でも食わず嫌いもよくないし、ということで初鑑賞。


惹かれあった二人がたまたま男性と男性だった、というだけで、なんの違和感も感じない。ただただ真っ直ぐな恋愛映画。

ただ、人として大伴(大倉忠義)が控えめにいって割とクズ。優柔不断でフラフラ流される。私自身のジェンダーやセクシャリティに関係なく、全く共感できなかった。「来年も」とか思わせぶりな台詞や無神経な台詞が多く。あのタイプ嫌い。ずっとイライラしながら観ていた。

今ヶ瀬(成田凌)の一途な想い。強さとしなやかさ。大伴に比べたらまだ今ヶ瀬の方が共感できる。ワイン貰ったときの今ヶ瀬が愛おしすぎる。


だけど、大伴や今ヶ瀬だけでなく、登場人物の誰にも感情移入はできなかった。それを必要としていない映画だと思うけど。
音楽はほぼ流れず、会話と肌が触れ合う音のみ。生活を覗き見ているような、傍観者のような気分。
だから多くはないけど、カメラはあんなに動かなくていいのになぁなんて思ったり。パンから入るカットでスッと止まって「はい、ここ見て」って言われてるみたいで。オープニングのタイトルクレジットの位置の時点でちょっとそういう予感はしたけど。


大倉忠義も成田凌も素晴らしかった。特に成田凌。タバコの吸い方も、目つきも、背中を丸めて椅子に座る姿もすごく良かった。

夏生もたまきもちょっと図式的すぎる感じがちょっと気になった。強気な台詞も、追いすがる姿も。
たまきの父親もちょっと意味がわからない。あれでわざわざ呼び出して一緒に昼飯食べる意味がわからない。あぁ違うか、自分で言えなそうなたまきに代わって言ってあげたのか。
大伴の部屋がモデルルームみたいで生活感なくてリアリティなかった。
ゲイバーに集まる人の描き方もちょっとステレオタイプな感じで違和感。
自動車で砂浜まで入り込むのも「それどこ?」って思っちゃったけど、でも空の色や雲の感じはキレイなシーンだったな。


話としては好きだけど、気になるセリフは多々あるし、そのセリフ以外で伝えようとしてる感が前に出てるところもあるような気がしてしまった。
R15+でいいのか?と思わせるぐらいのセックスシーンもいろんな意味ですごかったけど(音とか)、でもそこで観る映画じゃないし、そこばかりフォーカスされて話題になっちゃうとしたら、そんな悲しいことはない。
なくても良い気はするけど、大伴と今ヶ瀬の二人にとって意味があるし(二人の視点・視線は違うのかもしれないけど)、やはり何かを着地させるためには必要なシーンだし、キレイなシーンだったと思う。そしてちょっと切ない。


でもやっぱり気になるのはたまきの扱いだな。大伴ひどいぞ。


行定監督の作品、何か他にも観てみようかなぁ。悩む。あまり好きじゃないかもしれない。