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窮鼠はチーズの夢を見るのmのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
4.7
日本のLGBT作品は価値観が古いのも多くてなかなか安心して観れないけど、これは期待を裏切らない作品だった!
CMBYNに通ずるものを強く感じる。
ラブシーンも腐女子ウケを狙ったものではなく、2人の心情や関係の変化を表現する役割を果たしていて、「BL作品」ではなく真剣にLGBTを描いた芸術作品なんだと感じた。
こういういわゆるノンケ×ゲイの話は、ノンケ側の心情変化をどういう風に描くかがミソになると思うが、この作品はそこがしっかり描かれているのが良かった。
大伴の中で今ケ瀬の存在がどんどん大きくなっていって、今ケ瀬に流されてなんとなく…とか便利だからそばに置いておこうみたいなのではなく、自分の意思で今ケ瀬を心底好きになって求めようとする、その心情の変化がさりげないカットに埋め込まれているのがとてもいい。
今ケ瀬にとって大伴は例外だけど、大伴にとっても今ケ瀬は例外の存在になっていたんだと思う。でもそんな大伴の気持ちを簡単に信じることができない今ケ瀬が切ない、、
社会の冷たさも細部に織り交ぜられているのがリアルで辛い。
道行く人の2人を見る目や、ナツキ先輩の「だって男だよ!?」という言葉、誰もが大伴の相手は"女"だと当たり前のように決めつけてしまう所……こういう些細で、でも無視しきれないところに偏見は残されてるんだよなと思う。
個人的に、邦画にありがちな過剰な感情吐露シーンがないのが良かった。
やり場の無い感情を叫んだり暴れたりして吐き出すんじゃなくて、ただ押し殺すように噛み殺すように泣く2人の姿がとてもリアルで印象的。
成田凌の濡れたような瞳と、望みのない恋に溺れていく切ない演技に引き込まれた。
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