ラウぺ

フォードvsフェラーリのラウぺのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.2
企業文化が180度異なるフォードとフェラーリ。フェラーリの買収に失敗し、エンツォ・フェラーリからコケにされたヘンリー・フォード2世はル・マン24時間耐久レースで優勝してフェラーリの鼻を開かすべく、キャロル・シェルビーにその任を託す。シェルビーは破天荒な英国人レーサー、ケン・マイルズに協力を求めた・・・

不可能に挑戦してさまざまな困難を乗り越えていく物語は名作の王道パターンですが、目的のために二人の男が協力して困難に立ち向かうバディムービーであり、レースに勝つというスポ根ものでもあり、目標の達成のための努力を重ねながらも所属する組織の思惑との微妙なズレに苦悶する組織論の物語でもあります。
しかし、主役二人のマット・デイモンとクリスチャン・ベイルの圧倒的な男臭さを堪能するのと同じくらい魅力的なのが写し出されるクルマの映像美。
全編絵ハガキのような美しさ。
それはレース中のシーンだけでなく、街中やコースで停止しているところから整備中の場面、ただそこに写り込んでいるだけの場面でも、クルマが最も美しく見えるカットを最優先で選んでいるという感じ。
60年代のレトロなファッションや風景の完璧な再現ぶりが、絵画的な美しさを更に高めているのは間違いないでしょう。

物語的にも登場人物が多くなり説明的になりがちなところを整理してシンプルにまとめたことでストーリーラインが分かりやすく、また丁寧に描くべきポイントが適切に押さえられていることで さまざまな要素を取り込んでいるにも関わらず詰め込んだ印象にはなっていません。
登場人物が分かりやす過ぎとも思える程にキャラクター設定が明確になっているために、少々劇画的とも思える印象もあるにはあるのですが、これは人間観察に主眼があるのではなくて、先にも書いたようなさまざまな物語的要素をシンプルに見せるための色付けと考えるべきなのだと思いました。

まあとにかく、エンジンの爆音、ドライバーになったかのようなレース場面の迫力、胸アツな男とクルマのドラマとしてこれ以上何を望むのか?というほどの充実した映画でありました。
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