Hondaカット

フォードvsフェラーリのHondaカットのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.6
92点。最高に面白い!最高に格好良い!実話ベースの60年代モータースポーツ話。いまほど洗練されていない時代、アナログ主流の危険極まりない状況の中で頭がいっちゃってる男たちのとんでもない世界があった…というそれだけでドラマとして強固な題材。それを最高の役者と演出でソリッドにテンポよく進む。迫力のカー・シークエンスは大画面大音量で観るべき作品。

主役2人の男のキャラクターと友情、特に「表情で語っている本音のようなもの」が見事で、とりわけクリスチャン・ベイルの演技・佇まいには心を掴まれる。奥さんとの会話もなんという多角度の感情が入り乱れるやりとりか。

そして、レースシーン、テスト走行シーンふくめ、車撮影の(良い意味で)野蛮なこと!現代的な技術を見えない部分に使ってるとはいえ、実際に車やカメラを高速で走らせ撮っている昨今の映画では見られない荒々しい画とトーン。ギリギリ無茶して撮ったような粗い繋ぎの画が、まさに当時、アルミ一枚で囲った爆弾のような箱の中で320km出してたヤバさ、の画になってた。音も流石にマイケル・マンがプロデューサーなだけあって(関係ない?)かなりリアルなこだわり。当時のエンジン音再現はもちろん、軋む音や不快なくらいのサーキットの音が【痛い】音がしてて最高だった。

話的には史実からの誇張や端折りもたくさんある。もっとメカニックやセカンドドライバーのことも描いて欲しい気もある。レースの展開が飛びすぎてて簡単に見えてしまう欠点もある。そもそもベタな王道展開と言えなくもない。ただ、2時間半の一本の映画としてまとめるのに、2人の男の心の意地、その交流にしぼった決断は、ドキュメンタリーじゃない劇映画としてはキモを押さえていた。

何よりも時代感というのを見事に魅力的に描いてたように思う。当時の野蛮さを、荒々しい、騒々しい、でも【生】で【リアル】な時代を、いまの鮮やかな色彩のデジタル撮影で切り取る新しさというか。

ザックリとアナログ的な車の整備とか、当時の会社経営の勢いとか、生き方にかける情熱とか、ファッションや置いてあるモノなど、、、いまはもう失った社会、文化などを、嗚呼これでも十分豊かだった。むしろ、こ・れ・こ・そ・が・格好良い大人たちだった、と感傷的にさせられた。L.A.の荒野の画にエモい曲が流れるモノローグとか、琴線に響くいまっぽくないシーンがいくつもあったし、何故か、かつて子供だった自分が憧れた格好いい大人たちを見れた(時代はだいぶズレるのに)、という不思議な体験をした。

というのも、たぶん、個人的には、亡くなった父が大好きだったお話、大好きだった時代の出来事で、それを追体験できた感覚なのかも。観ている間の半分くらいは、これ、父親好きだな…生きてたら楽しんだな…と無意識に考えてたし、子供の頃ル・マンやF1や007の話をたくさん聞かされていたからだろう。そんな想い込みで10点くらい加点してると思う。

IMAXか、MX4Dでもう一回観たい。
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