すずき

フォードvsフェラーリのすずきのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.4
1960年代半ばのアメリカ。
自動車会社の大手フォード社は、イタリアのフェラーリ社の買収に失敗。
モータースポーツ第一のフェラーリと、ビジネス第一のフォードの意見が噛み合わなかったからだ。
頭に来たフォード社長は「だったらフェラーリをル・マン24時間耐久レースでぶっ倒しちゃる!」と宣言。
金と物量にモノを言わして、過去8年間で7度優勝の絶対王者・フェラーリに挑む!
こうして打倒フェラーリを依頼されたのが、過去に1度だけフェラーリを破った元レーサー、シェルビー。
彼は心臓の病でレースには耐えられない身体だったが、彼の知識とチームの下で、彼の友人である凄腕レーサー兼エンジニアのケンがフェラーリに挑む…!

当初は劇場鑑賞スルーしようかと思ってたけど、アカデミーノミネート&評判良かったので鑑賞。
実に良かった!劇場に足を運んで正解!
カーレースという過酷な男の世界でのシェルビーとケンの友情が熱い!
史実とは結構違って脚色も多いらしいけど、ドラマチックで面白かったからいいのだ。

大企業のフォードが金に物言わせて職人気質の町工場フェラーリを倒す、という筋書きに「フォードをヒーロー側に描くのは無理あるよなぁ…」と思ってたけど、映画内でもフォードを善玉として描いてなかった。
というか寧ろフォードが悪と言ってもいいぐらいの描き方。
タイトルこそ「フォードvsフェラーリ」だが、金儲け第一のクソ企業フォードvs協力しながらも自分たちのロマンを追いかけるシェルビー&ケン、という構図だった。

女性キャラはほぼ出なくって、男ばかりの映画。
だけど、そんな男の世界で紅一点のヒロインが、ケンの奥さんなんだけど、これがまたいい女!
夫に生活の事よりロマンを追い求める事を優先させたり、夫とシェルビーが取っ組み合いのケンカ始めたらデッキチェア持ってきて終わるまで待ってたり(終わった後はコーラ持ってきてくれる)。
多分彼女、「好きな事に打ち込んでる男(たち)」を見るのが好きな人なんだろうな。現在だと腐女子二歩手前ぐらいになってそう。

そしてカーレースの迫力!
超カッコいいマシンがエンジン爆音鳴らして走り続ける!
私そんなにカーレース興味なかったんだけど、男の子感性を否応なく刺激するよね。
カーレースは設計・整備チームが一丸となるチームスポーツっぽくもあり、ケンとシェルビーの関係はボクサーとセコンドのようでもある。
だけど、「7000rpsの世界」においては、やはり自分自身の感覚だけが頼りになる。
自分以外全てを置き去りに、ただ純粋な「速さ」だけと相対するそこは、常人では辿り着けない境地なのだろう。
人間的には不器用で問題アリのケン。彼は速く走る事だけしか知らない、純粋なレーサーだった。