狭須があこ

フォードvsフェラーリの狭須があこのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.2
歴史上、最も人間ドラマの上手なクルマ映画に輝きました、おめでとう。
車が走る映画って制作サイドも車バカなことが多くて、そもそもこういう方向性の映画がほとんどないのよな

ん~~~~~ジャマが入ったり、自由にやらせて貰えなかったり、歯痒いシーンが波乱万丈あるものの、でもこれは社会として、会社として、めちゃくちゃ上手いこといく話だな~~~~と唸りました。
ノンフィクションでしょう。すごいぜ

①車キチガイ社会性ゼロ、ケンマイルズ。
②気持ちはわかるが、コミュ力で社会と繋がるキャロルシェルビー。
③気持ちはわかるが、会社なんとかせなあかんねんリーアイアコッカ。
④知らんがな会社なんとかせなあかんねんレオビーブ。
⑤おう会社なんとかしてくれや、フォード社長2世。

主人公が上2人なので、下に行くほど悪でバカに見えてくる映画ではあります。でも
でも、社会って…会社って
下2人みたいな人間が居なかったらケンマイルズはそもそも、多分、クルマに乗って走れてないと思うんだ

最後のシーンも、見てる私たちには歯痒い終わりだったけども、でも。
フォードだよ、大企業だからな。
金儲けもある、イメージ戦略もある、ライバル企業とのしがらみもある。生き残るために速けりゃいいワケではないの、当然だと思うし

無能に見えるレオビーブ、めっちゃ腹立ったけど、でもフォードってあいつが重鎮の会社でしょ?つまりあいつこそ、あそこの社風ってことじゃんか。
そこにだよ。
ケンマイルズとかを投入することに、どれだけの譲歩があったのかだよ。

ケンマイルズは、考えたんだと思います。
社会性のない自分がこの場所に立つために、下4つの人間たち全てに相当な不満と、譲歩と、努力と、決断があったことを。
社会を上手く回している人間は下の奴らで、そして実際下の奴らのほうが世の中には多い。

自分の得意なステージをそれぞれが担当する会社、それは私は幸せだと思った。
お互いに長所と短所がありながら、適材適所。気が合いもしないのにチームワーク。
奇跡だわ。ケンマイルズ、少なくともキャロルシェルビーの必死さは見ていたワケじゃん。
もうこれは、自分だけの勝ち負けじゃないなと思えたんじゃないかな。

あと、奥さん
クルマが好きで、旦那に理解と愛があって、それでも尚、言動が女の人
嘘ついた!!ってパニクったりとか、工場で音楽流したりとか何度か「は????」と思ってしまった
クルマ好きなのに男の世界の外側にいるの、めちゃくちゃリアルですげぇなと思いました。

人間ドラマいらんなと思った人は「栄光のル・マン」、あんま怖くないなと思った人は「ラッシュ/プライドと友情」を見てね
これは人間ドラマとレースのハラハラ、どちらもをバランスよく描くことに成功している、なかなか稀有なクルマ映画です。
狭須があこ

狭須があこ