アキラナウェイ

フォードvsフェラーリのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.5
皆様から何周も何週も周回遅れで、ようやくゴール!!

最初はノーマーク。
車に興味ないし。
フォードもフェラーリもご縁がないし。
それでも相次ぐ高評価のウワサ。
これは観に行くべきでShow!!観に行かNever!!

嗚呼!!これは本当に当たりだった!!
車に興味があるなしじゃなかった。
描かれていたのは、男と男の友情と挑戦と情熱とその生き様だった。それは普遍的なもので、人の心に伝わる熱気そのもの。

絶対王者フェラーリに挑むフォード。
彼らが望みを託したのは破天荒な2人の男達。

1960年か1965年までル・マン24時間耐久レースを6連覇中のフェラーリ。打倒フェラーリに燃えるアメリカ最大の自動車メーカーであるフォードは、気鋭のカー・デザイナーとして活躍するキャロル・シェルビー(マット・デイモン)にフェラーリ社に勝てる車を作る様に依頼する。そして、シェルビーが協力を求めたのは、凄腕のイギリス人ドライバー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)だった。

いやぁ…。
この映画を語るには、主演のお二人の事を差し置いて何を語るべきでしょう。

ハリウッドで随一の「変わらない男」マット・デイモンと、ハリウッドで随一の「変わり続ける男」クリスチャン・ベイル。

マット・デイモンは、安定の演技力を。
クリスチャン・ベイルは、本物に寄せる演技力を。
安定性と革新性。

マット・デイモンは必ず期待通りの演技を見せる。それ以上でもそれ以下でもないかも知れないが、どの作品でも、彼でないと出せない優しさがある。

クリスチャン・ベイルの通常体型って、もはや何kgなんだかわからない。痩せ型の体型がストイックな性格を表しているかの様な本作。独特の笑い方、目線の運び、立ち振る舞い、英国訛り。全ての所作に、役作りへの真摯な想いが透けて見える。

時にぶつかりながらも信頼を寄せる。
シェルビーとマイルズの友情を確かな演技力で魅せる2人。

中盤で見せる本気の喧嘩、いや大の大人の戯れ合いがたまらなく愛おしい!!

24時間耐久レース。それは、朝も夜も晴れの時も雨の時も、走りっぱなし。

低く呻るエンジン音は僕らの心音。
ギアチェンジで段階的に上がる音は、僕らの胸の高鳴り。

7,000rpmの世界。
rpm="revolutions per minute"または"rotations per minute"

そう、僕らは毎分7,000回転の世界を体感する。

ある種のトランス状態。
その道を極めた者でなければ見えない世界。

真剣勝負の2人に横槍ばかりを入れてくるフォード上層部の人間にも、24時間耐久レース中に、ヘリで中座するフォード社長にも、そりゃあもう腹が立つ。

でも、不思議とル・マンで優勝とか、フォードがフェラーリを負かしたとか、そんな事はどうでも良くて、何せ7,000rpmで走る運転席に同乗させてもらえた事で、意味のわからない涙がボロボロ流れた。圧倒的な凄さに感動したんだと思う。

マイルズの妻は、男顔負けの強さを。
マイルズの息子は、絶対的な父への憧れを。

脇を固めたマイルズ家のキャラクターも素晴らしかった。

胸が熱くなる153分間。
不思議と長さは感じなかった。