あおや

フォードvsフェラーリのあおやのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
3.8
“7000回転の世界”

“そこでは肉体だけが残り、時間と空間を移動する”

それは常人からはおよそ想像を絶する世界である。一歩間違えれば大惨事となるクラッシュ、命の危険と隣り合わせの世界。そんなレースが繰り広げられる24時間耐久レースにおいて、圧倒的強さを誇るフェラーリ社。その牙城を崩すべく立ち上がったフォード・モーター社と二人の男の実話を描いたのが本作である。

そもそも24時間耐久レースとやらを鑑賞前まで知らなかったのだが、どうやらF1とも使用されるレーシングカーが異なるらしい。1台の車の部品を交換しながら複数の運転手交代制で24時間走り続けるレースはあまりにも過酷。劇中にも出てくるル・マン24時間レースはあのモナコGP、インディ500と並ぶ“世界三大レース”である。

本作は【信頼】の物語だ。
ケンは自ら手掛けたGT40を信頼し、カーブぎりぎりの所までアクセルを踏み込む。シェルヴィーもまたケンの車への愛とその腕前を信頼し、自らの進退全てを懸ける。モリーはケンの勝利を。フォード二世はシェルヴィーの言葉を。様々な【信頼】が重なり合い、彼らは決戦の舞台ル・マンへと挑んでゆくのだ。この【信頼】が人々、果ては巨大組織をも突き動かしていく様は胸を熱くさせる。

圧巻のレースシーン。そこに込められた人々の想い。尻上がりに熱量が高まっていく映画だけあって、ラストは想像以上に切ない。
あおや

あおや