銀色のファクシミリ

フォードvsフェラーリの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.3
『#フォードVSフェラーリ』(2020/米)
劇場にて。ル・マン24時間耐久レースで五連覇中の王者・フェラーリに、勝つべく挑戦したフォードの物語…なんだけど、ライトスタッフでのチームワーク成功譚ではなくて。むしろ主人公二人の「生き様」を描いたことで、より骨太な物語になっていると思えました。

フォードとフェラーリという知らぬ者のない自動車メーカー。しかしその理念は「王道ビジネスvsロマンと美」と大きく異なる。幾つかの出来事を経て、フォードはル・マン5連覇中の王者フェラーリの打倒を掲げてレーシングチームを立ち上げる。

チームを率いるのは、病気で引退した元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビー(マット・デイモン)。シェルビーは打倒フェラーリのために、性格面で難はあるが実力は折り紙付きであり、優秀なテストドライバーの才能も備えているケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)を抜擢する。

しかし破天荒なマイルズを、企業イメージを重視する重役達は難色を示し、チームは彼らと軋轢を抱え、またフェラーリと戦えるレーシングカーの製作は短期間という制約もあり難航する…という前半。

「フォードチームは経営陣と相争い、その余力を持ってレースを戦う」という(元ネタわかるかな)、もたつきすら覚える前半を乗り越え、いよいよデイトナ→ル・マンが始まる後半。絶対に映画館で観るべき映像と音響。また長丁番なレースの注目点を分かりやすく伝えてくれる親切設計も良きでした。

病気で引退しながらレースの世界から離れられないシェルビー、一度は引退を決めながらレースこそ生き甲斐であるマイルズ。二人の「生き様」が描かれ、マイルズを案じながらも彼の生き方を認める妻、父がヒーローではなく、いつ死ぬか分からない世界の住人だと気づく息子のエピソードが厚みを持たせる。

映画のラストが、あの自動車の走行シーンなのは「それでも、走り続ける」というレースと人生に重なるテーマを示したかったのかなあ、と思いました。感想オシマイ。
(2020年1月13日感想)