TAK44マグナム

ゴーストランドの惨劇のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)
3.9
HELP ME.


胸糞ホラーの代名詞「マーターズ」のパスカル・ロジェ監督がまたもや(良い意味で)胸糞悪い作品を我々に魅せてくれた!
「マーターズ」も主に2人の女子が理不尽な暴力に翻弄される内容でしたが、本作もある姉妹が突然の暴力に晒されるところから始まります。


ヴェラとベスの姉妹が母親に連れられて、今は家主を失った叔母の家に越してくる。
荷物を整理していると突然、スキンヘッドの大男が襲来、姉妹を拉致しようとするではないか。
ベスは逃げ出すがヴェラはどこかの部屋に連れ去られてしまう。
逃げ惑ったベスは、母親がもう1人の男と格闘しているのを怖くて傍観しかできずにいた。
やがて、必死の母親の奮戦によって男たちは倒され、長い年月が経った。
ベスは夢だったホラー作家として大成しており、幸せな家庭を持っていた。
ある日、あの家に残してきたヴェラからSOSの電話があり、不安になったベスはあの忌まわしい家を再び訪ねる。
久しぶりに会う母に歓待されるベスだったが、事件によって精神を病んだヴェラの様子は見るに耐え難いものであった・・・


パスカル・ロジェって、よっぽど女子を酷い目にあわせるのが好きなんでしょうか?
「マーターズ」では本気すぎる演技への要求で実際に女優さんの怪我が絶えず、大変な現場だったらしいですけれど、本作でも同じような感じだったとしてもおかしくないほど凄惨な暴力が振るわれます。
(実際、女優さんが怪我をして訴訟事件になったらしい)
何か凶器でバラバラにするとか、そういうある意味、突飛な暴力描写ではなく(必要なら平気で首を掻っ切ったりしますが)相手が力の弱い女子なのにお構いなく殴る蹴るといった、比較的想像しやすい痛みを与えるのが趣味なのかなと勘ぐりたくなるほど殴りつける暴力描写が多いですね。
「マーターズ」の拷問も、殆ど殴ってましたし。
女性の顔を殴るという行為は、文明社会では忌み嫌われる恥ずべき行為。
それを平気でおこなうわけで、その行為自体に戦慄せざるおえないわけですね。

とは言うものの、尊厳を軽視するようなレイプシーンなどは想像の範疇に任せて直接的な描写は無いので(股間に手を入れたり、匂いを嗅いだりと不快指数が高い粘着質な描写は多々ありますので注意)男たちの目的は本当に「お人形遊び」だったのかもしれません。
そう、大男は精神異常者で、人形遊びだけが生き甲斐のような狂人なのです。
家には人形がたくさん置かれていて、気に食わないと破壊してしまいます。
彼にとっては人間である姉妹も人形でしかなく、反抗的な態度をとれば顔が変形するほど殴ってスッキリするという、キモいにもほどがある危険な異常者と、その保護者的役割のロン毛の女装男に姉妹は支配されてしまいます。
特殊メイクで目蓋や頬が変形させられた姉妹が痛々しくてたまりません。

しかし、本作はたんなる暴力だけの作品ではありません。
優れたミステリーの一面も併せ持っており、中盤にある種明かしで驚かされました。
追い詰められた人間の心理を利用したトリッキーな物語に変容し、そこから先はスリリングな脱出劇を楽しめる寸法です。
終盤の展開に至っては多少、凡庸な印象も受けましたが、変わらぬ姉妹愛や人間の底知れぬ強さがきちんと描かれ、最後のセリフが「幻想でしかなかった未来」と「来るべき本当の未来」をリンクさせているのが素晴らしかった。
とても良い脚本だと思います。

ベス役を演じたクリスタル・リードとエミリア・ジョーンズの透明感のある美しさも特筆すべきですね。 
特にクリスタル・リードには見惚れてしまいました。
「スカイライン-征服-」にも出演していたんですね。すっかり忘れていました。
エミリア・ジョーンズが成長すると、本当にクリスタル・リードの様なルックスになりそうで、その点でも説得力がありました。
因みに、本作はホラー作家のH・P・ラヴクラフトをリスペストしている部分がありますが、ラヴクラフトの生前の写真を見ると、女装男を演じたケビン・パワーがまじめに似ていてビックリ。


確かに胸糞悪くもあるのですが、胸糞悪いままで救いがなかった「マーターズ」と比べればかなり娯楽寄りの映画らしい映画になっていると思いました。
単純な展開に陥りがちなホームインベージョンホラーに、展開の妙で魅せる新味を加えた作品としても評価されて良いのではないでしょうか。


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