ソフィー

ビル・エヴァンス タイム・リメンバードのソフィーのレビュー・感想・評価

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一ヶ月前、YouTubeを漁っていてたまたま見つけた「Waltz For Debby」。
口ずさめるほどメロディックで、テンポのとり方が天才的で一目惚れした。
音楽経験はあるけどそれまで基本的にジャズは苦手だったし、ピアノも良し悪しがわからなくて聴く趣味はなかった。
それをひっくり返してくれた。
調べたら2015年の映画が日本で公開するらしく、運命を感じて映画を観るに至った。

同名のアルバムだけ聴き込んで、あとは映画のトレーラーを軽く観て鑑賞に臨んだ。
ヤク中だったのは情報として知っていたし想定内だったけど、女性遍歴に少しびっくり。
でも正直、音だけで一目惚れしたから実際にビルに惹かれるのは当然のことなのかもしれない。

たくさんの人がビルの音楽について、うっとりと語るのが好きだ。
繊細で美しくて少し切ない。
美しさは理解できるのに、どうやったらこんな曲を思いつくのか想像できなくて、私たちはただ天才と呼ぶだけ。

音楽は対話というけれど、ようやく初めてその意味がわかった気がする。
息を合わせるとかそんなんじゃなくて、特にアドリブがあるジャズにはその数段階上があるんだなと。
四六時中ピアノを触っているから、話すように思っていることを反射で音に変えられるんだと思う。

元々、音楽のジャンルを問わず速弾きにまったく魅力を感じてなくて、だからビルエヴァンスのピアノは私にとって衝撃的だった。
一音一音すべて制御されていて緩急に富んでいて、どこを切り取っても美しい。

あぁなんでこんな美しいものを生み出せる人ほど、自分の内面と向き合う苦しみを死ぬほど味わわなきゃいけないんだろう!
でもきっと本来は逆なんだろう。
地獄の苦しみを至上の美しさに変えて表現する才能が欲しいような、欲しくないような。
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